
インテリスタの不動産論 魔法使いと禿げていく男
モラッティの時代が終わり、インテルは別の戦い方を覚えなければならなかった。
オイルマネーはもうない。プレミアリーグのクラブが何百億も使う移籍市場で、インテルの予算はその半分以下だ。
それどころかセリエA自体が、戦術的な限界を抱えている。3バックが主流のイタリアでは、速くて強いプレミア勢には正面から勝てない。
構造の問題だ。金の問題だ。
そんな中でマロッタは、別の武器を研ぎ澄ませた。
目利きだ。
バレッラを獲った。誰もあの値段では買わなかった。ラウタロ・マルティネスを獲った。当時アルゼンチンの無名の若手だった。チャルハノールはゼロ円で連れてきた。後から振り返れば全員、信じられない安さだった。
そして今期、ピオ・エスポジトという若い才能がブレイクしつつある。マロッタの目はとっくに届いていた。
その執念で、インテルは2年連続でCLのファイナルまで辿り着いた。
だがバレッラを見ていると、胸が痛くなる。
あの男は毎試合、限界まで走る。削られても立ち上がる。
諦めるという選択肢が、たぶん存在しない。その結果、彼の前髪は試合を重ねるごとに、少しずつ後退してきている。前から、じわじわと。
私の髪も、インテルを応援するたびに白くなってきた。
バレッラは前から失い、私は色を失った。
我々はそれぞれの形で、このクラブに削られている。
それでもマロッタは次の一手を探し続ける。
超えられない壁の前で、諦めない。
金がなくても、構造が不利でも、できることを限界までやる。
**私がこの男を尊敬するのは、勝ったからではない。やり切るからだ。
次回、この話が私の仕事につながる。