
事故物件とは?告知義務・3年ルール・裁判例・価格への影響を不動産会社が解説
事故物件・心理的瑕疵|売買・賃貸|告知義務・国土交通省ガイドライン・裁判例
事故物件とは何か|告知義務・3年ルール・裁判例と不動産価値を考える
不動産を探していると、ときどき 「事故物件」 という言葉に出会います。
売買でも賃貸でも、弊社では物件をご紹介する際、 告知事項に記載があるかどうかだけで終わらせず、 必要に応じて、その物件について独自に確認することがあります。
なぜ、そこまで確認するのか。
理由は難しいものではありません。
弊社でお話を伺っていると、特に若い女性のお客様から、
「昼間は大丈夫でも、お風呂に入っているときに思い出しそう」
「夜、寝ているときに気になってしまう」
といった話を聞くことがあります。
もちろん、まったく気にされない方もいます。
お化けがいると思う方も、いないと思う方もいるでしょう。
それを決めることは、不動産会社の仕事ではありません。
私たちが確認すべきなのは、 その物件で何があったのか。 取引上、どのような説明が必要なのか。 お客様がそれをどう感じるのか。 そして、その事実が価格や賃料、将来の売却に どのような影響を与える可能性があるのかです。
1|いるか、いないか。それを決める記事ではありません
ある住戸で人が亡くなったからといって、 それだけで建物の耐震性能が下がるわけではありません。
地盤が変わるわけでも、 設備の性能が落ちるわけでもありません。
物理的な不動産として見れば、 その前日と同じ建物です。
それでも、
という方はいます。
そこには個人の考え方だけでなく、 文化や社会的な印象、テレビ・新聞などの報道、 インターネットやSNSなど、 さまざまなものが影響しているでしょう。
事件性の高い出来事であれば、 物件名や場所と出来事が結びつき、 長期間にわたって記憶されることもあります。
だからといって、
「気にするのは迷信だから、考えなくていい」
と不動産会社が決めることでもありません。
住むのは、不動産会社ではなくお客様だからです。
そして不動産には、もう一つ重要な側面があります。
自分が気にしなくても、 次に買う人、借りる人は気にするかもしれない。
人の心理は、需要を通じて 不動産価格や賃料にも影響します。
2|そもそも「事故物件」とは何なのか
「事故物件」という言葉は一般に広く使われています。
しかし、
という単純な制度ではありません。
そこで実務上重要になるのが、国土交通省の 「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」 です。
国土交通省は2021年10月、 居住用不動産で過去に発生した人の死について、 宅地建物取引業者がどのように調査し、 どのような場合に告知するのかについて 一般的な基準を整理しました。
3|事故物件のガイドラインは改正されたのか
事故物件の告知義務について調べると、 「ルールが変わった」 「3年経てば告知しなくていい」 といった情報を目にすることがあります。
しかし、ここは売買と賃貸を分けて考える必要があります。
2026年9月現在、国土交通省が公式に掲載している 基本となるガイドライン本文は、 令和3年10月策定版です。
基本的な考え方として、 老衰や病死などの自然死、 日常生活の中で生じた転倒や誤嚥などの不慮の死については、 特殊清掃等が行われた場合などを除き、 原則として告げなくてもよいとされています。
一方、自殺・他殺など自然死等以外の死や、 特殊清掃等が行われた事案については扱いが異なります。
「3年経てば告知しなくていい」は、すべての取引には当てはまりません
特に誤解されやすいのが 「概ね3年」 という期間です。
賃貸借取引では、 自然死等以外の死など一定の事案について、 事案発生から概ね3年が経過した後は 原則として告げなくてもよいという考え方が示されています。
しかし、
さらに、買主・借主から事案の有無について質問された場合や、 社会的影響が大きく、 相手方が把握しておくべき特段の事情がある場合などは、 単純に経過年数だけで判断するものではありません。
したがって、
「事故物件は3年経てば告知義務がなくなる」
と売買・賃貸を一括りに理解するのは適切ではありません。
4|事故物件のガイドラインに罰則はあるのか
ここも、事故物件の告知義務を考えるうえで 重要なところです。
国土交通省のガイドラインは、 法律そのものではありません。
したがって、 ガイドラインに沿わなかったという事実だけをもって、 直ちに宅地建物取引業法違反になる、 という性質のものではありません。
この点は、賃貸住宅で知られている 「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」 にも似ています。
しかし、
ここから先は、 宅建業法上の問題だけではなく、 民事上の責任も考える必要があります。
5|宅建業法と民事上の損害賠償は、別の問題です
事故物件についてトラブルになった場合、 問題になるのは 「ガイドラインに違反したか」 だけではありません。
買主や借主から、
「その事実を知っていれば契約しなかった」
「知っていれば、その価格では購入しなかった」
「説明されなかったことで損害を受けた」
として、損害賠償を求められる可能性があります。
国土交通省のガイドラインも、 ガイドラインに沿った対応をしたからといって、 個別の民事上の責任まで当然に免れるものではない、 という考え方を示しています。
そして実際に、 事故物件・心理的瑕疵をめぐる民事訴訟は 繰り返し起きています。
6|事故物件・心理的瑕疵をめぐる裁判例
裁判例を見ると、 事故物件について 一律の答えがない ことがよく分かります。
京都地裁 平成29年12月13日|通常価格の約5割減で売却
共同住宅の一室で賃借人が自殺した事案です。
その3か月後、所有者は心理的瑕疵が生じたとして、 建物とその敷地を 通常価格から約5割減額して第三者へ売却 しました。
所有者はその減額相当額などを 保証人らへ損害賠償請求しました。
しかし裁判所は、 実際に約5割減で売却されたという事実があっても、 その減額相当額のすべてを法的な損害としては認めませんでした。
一方で、逸失利益の一部や原状回復費用については認めています。
大阪高裁 平成26年9月18日|約1年数か月前の自殺を告げず賃貸
居住目的の賃貸借契約で、 約1年数か月前に建物内で自殺があった事実を 貸主が故意に告げず契約した事案です。
大阪高裁は、 自殺の事実が契約目的の達成に関わる瑕疵に当たり、 その不告知について不法行為が成立するとした 原審の判断を維持しました。
つまり、
「建物そのものは普通に使用できる」
ということだけで、 説明の問題がなくなるとは限りません。
東京地裁 平成22年3月8日|建物撤去後の土地でも問題になった事例
売買対象となった土地には以前建物があり、 その建物内で売買の約3年前に焼死者が発生していました。
売買時には、その建物は既に存在していませんでした。
それでも裁判所は、 過去の死亡事案について 土地にまつわる心理的欠陥として瑕疵に当たると判断し、 損害賠償請求の一部を認めています。
つまり、
東京高裁 令和5年9月14日|心理的瑕疵が認められなかった事例
反対方向の裁判例もあります。
賃貸マンションのバルコニーから 賃借人の妻が転落して死亡した事案について、 貸主は心理的瑕疵による損害が発生したとして 損害賠償を求めました。
しかし東京高裁は、 本人の意思とは無関係に生じた偶発的な事故であることなどから、 賃借人側が貸室に心理的瑕疵を発生させたとはいえないとして、 請求を認めませんでした。
7|事故物件になれば、価格は半分になるのか
「事故物件は何割安くなるのか」 という質問もよくあります。
しかし、 事故物件の価格下落率に一律の基準はありません。
自殺なのか、他殺なのか、事故なのか。
どこで発生したのか。
どの程度時間が経過しているのか。
事件性や報道の程度、 物件の立地や希少性、 その時点の不動産市場によっても変わります。
先ほど紹介した京都地裁平成29年12月13日の事案では、 所有者が実際に 通常価格から約5割減額して売却 しています。
しかし、だからといって
「事故物件になれば半値になる」
と一般化することはできません。
考え方は、もっと単純です。
通常なら10人が購入を検討する物件について、 事故の内容を知った後、 「それでも買いたい」という人が2人になれば、 同じ価格で売却できるとは限りません。
事故物件の価格・資産価値の問題は、 ここにあります。
8|自分が気にしなくても、次の買主は気にするかもしれない
「私は事故物件を気にしないので、 安ければ買いたい」
それも一つの考え方です。
価格次第では合理的な判断になる場合もあるでしょう。
ただし、売買では購入したときだけでは終わりません。
5年後、10年後に売却するとき、
したがって、 事故物件を購入する場合には購入価格だけではなく、 将来の売却価格と流動性 まで考える必要があります。
これは事故物件だけの話ではありません。
旧耐震、借地権、地盤、ハザード、 管理状態、修繕、特殊な間取り。
不動産には、 価格だけでは分からない事情があります。
大切なのは、 その理由を知ったうえで、その価格なら合理的なのかを判断すること です。
9|不動産会社は、事故物件をどこまで調べるのか
ここは意外に知られていません。
国土交通省のガイドラインでは、 宅地建物取引業者が媒介を行う場合、 売主・貸主に告知書等への記載を求めることが 通常の情報収集として示されています。
一方、 周辺住民への聞き込みや インターネット上の情報を網羅的に検索するといった 自発的な調査まで、 すべての宅建業者に一律に求めているわけではありません。
ただし、 人の死に関する事案の存在を疑う事情がある場合などには、 売主・貸主への確認が必要になります。
つまり、
10|大手不動産会社だから安心、という話でもありません
以前の取引で事故に関する説明がなかったからといって、 直ちに 「前の不動産会社が隠した」 と断定することはできません。
仲介会社自身が把握していなかった可能性もあります。
売主・貸主から告知されていなかった可能性もあります。
そもそも国土交通省のガイドライン上、 告知を要しない事案だった可能性もあります。
一方で、
会社の規模と、 その一件についてどこまで確認したか は、分けて考えるべきだと思います。
11|だから、弊社では必要に応じて独自に確認します
重要事項説明書に書いていないから終わり。
告知書にないから終わり。
大手不動産会社が扱っているから大丈夫。
弊社では、それだけでは判断しません。
売買でも賃貸でも、 お客様が気にされる可能性がある以上、 必要に応じて、公開情報を含め確認できる情報を調べます。
もちろん限界はあります。
弊社は捜査機関ではありません。
非公開の事実まで確認できるわけではありませんし、 インターネット上の書き込みだけを根拠に 「事故物件です」と断定することもしません。
亡くなられた方やご遺族の プライバシーや名誉への配慮も必要です。
それでも、
そこには、不動産会社によって差が出ます。
記事を書くために調べているのではありません。
物件を見るときに調べていることを、 記事にも残しています。
そこも、私たちの仕事です。
12|事故物件の話は、結局「不動産価値とは何か」という話になる
事故物件について考えていくと、 最後は一つの問題に行き着きます。
土地だけではありません。
建物だけでもありません。
法律だけでもありません。
そして、人の感情だけでもありません。
何があったのかを確認する。
国土交通省のガイドラインを確認する。
裁判例を見る。
その物件が市場でどう評価されるのかを見る。
そして最後に、 自分はどう感じるのか。
そこまで分けて考えればいいと思います。
私たちは、
「事故物件だからやめた方がいい」
とも、
「気にしなければ安く買えて得」
とも一律には考えません。
一件ずつ、事情が違うからです。
あわせて読んでいただきたい記事
事故物件に限らず、 不動産会社がどこまで確認するのか。 その仕事自体を比べていただいて構いません。
不動産会社まで、比べてください。
物件を比べるように、 その一件をどこまで確認する会社なのかも、比べていい。
事故物件だけではありません。
地盤、ハザード、管理、修繕、 周辺環境、告知事項、そして価格。
一つの住所、一つの建物を、 どこまで見るのか。
仕事まで見てください。
続きは、その一件について。
「このマンションは大丈夫だろうか」
「以前、何かあった物件なのか気になる」
「他社から説明を受けたが、もう一度確認したい」
そんな段階でも構いません。
物件名やURLをお送りください。
確認できる情報を重ね、 その一件について一緒に見ていきます。
この物件について相談する田町・芝浦を拠点に、港区・湾岸を中心にご相談を承っています。
不動産は、物件から始めない。
先に、お話を。
株式会社 blue blooded
代表 松村 健一