
青葉台の土地・地盤を徹底解説|多摩丘陵・旧水田・谷戸・暗渠・盛土・擁壁とハザード
青葉台の土地・地盤|多摩丘陵・坂・造成地から住宅地を読む
青葉台を歩いていると、不思議な場所があります。
駅前には商業施設が並び、少し歩けば整然とした住宅街になる。
道幅も広く、街路樹も多い。
いかにも計画的につくられた住宅地です。
ところが、そのまま歩いていると、一本の道路を境に土地の高さが急に変わる場所があります。
道路とほぼ同じ高さに家が並ぶ側。
その向かいには、高い擁壁の上に戸建てやマンションが建つ側。
さらに恩田方面へ行けば、丘を背負うように建つ住宅や、斜面に入り込むようにつくられたマンションも見えてきます。
なぜ、同じ青葉台でこれほど土地の表情が違うのでしょうか。
答えは、現在の住宅地だけを見ていても、なかなか分かりません。
青葉台は、多摩丘陵の上につくられた街です
青葉台を含む横浜市青葉区の大部分は、多摩丘陵に位置します。
ただし、「丘陵地だから地盤が良い」と一言で片づけることはできません。
丘陵には、丘の上があります。
斜面があります。
そして丘と丘の間には、谷があります。
青葉台周辺の古い地形図を見ると、その姿は現在よりはるかに分かりやすく残っています。
今回確認したのは、横浜市が公開している昭和30年代の三千分一地形図です。
横浜市によれば、昭和30年代の三千分一地形図は、1954(昭和29)年から1965(昭和40)年にかけて空中写真測量によって作成されたものです。
今回確認した青葉台周辺の図葉は、主に「62-6 恩田西部」「72-4 恩田」「72-1 鴨志田」です。
地図を見ると、現在の住宅街からは想像しにくいほど、細かな等高線が何本も走っています。
丘があり、その間に細い谷が入り、その谷が別の谷へつながり、やがて大きな低地へ出る。
現在の青葉台周辺は、もともと平らな土地だったわけではありません。
昔の地図を見ると、水田の場所が見えてきます
古い地図でもう一つ目を引くのが、水田です。
水田は、どこにでもあるわけではありません。
丘の上ではなく、丘と丘の間。
谷の底。
そして川や水路に沿った低い土地に、細長く続いています。
これは偶然ではありません。
水田には水が必要です。
そのため、昔の土地利用を見ると、その土地に水がどこから集まり、どちらへ流れていたのかを考える手掛かりになります。
青葉台周辺では、
↓
斜面
↓
谷戸の底に水田
↓
水路
という地形が繰り返されていました。
現在の道路や建物だけを見ていると、この姿はほとんど分かりません。
しかし、土地の履歴まで消えてしまったわけではありません。
青葉台駅前も、昔から駅前のような土地だったわけではありません
これは青葉台を理解するうえで、かなり重要です。
現在の青葉台駅周辺は、東急田園都市線を代表する住宅地の一つです。
駅前には商業施設があり、その周囲にはマンションや住宅が並びます。
ところが、開発以前の資料を見ると景色はまったく違います。
三井住友トラスト不動産が公開している地域史資料「このまちアーカイブス」では、明治後期の青葉台駅前に当たる場所について、「細い谷戸に水田、ほかは山林」だったことが紹介されています。
さらに昭和30年代の青葉台駅南西付近には「恩田橋(黒橋)」があり、その下を「雨堤堀」が流れていました。
雨堤堀は現在のしらとり川につながる流れです。
同資料では、雨堤堀について、丘陵に細く入り込む谷戸で、川に沿って細長く水田が延びていたことが確認できます。
↓
谷戸
↓
水田
↓
雨堤堀
↓
現在のしらとり川
そして現在、しらとり川の上流部分は暗渠となっています。
一方、旧恩田橋より南側では地上に現れ、恩田川へ注いでいます。
つまり現在の青葉台駅周辺の一部は、もともと谷戸・水田・水路という土地の履歴を持っていたことになります。
その後、田園都市線の開通と大規模な宅地開発によって、現在の街へ変わっていきます。
街並みは大きく変わりました。
しかし、ここで考えたいことがあります。
「昔、水田だったから地盤が弱い」ではありません
ここは誤解しないようにしたいところです。
古い地図で水田を見つけたからといって、
「ここは地盤が弱い」
と判断することはできません。
水田だったという土地利用だけで、現在の地盤性能を決めることはできないからです。
では、なぜ昔の水田を見るのでしょうか。
「水田だったか」ではなく、「なぜそこが水田だったのか」
です。
青葉台周辺の旧地形図を見ると、水田の多くは丘陵の間に入り込んだ谷戸の底や、水路・河川沿いの低地にあります。
こうした場所では、丘陵上部とは地盤の成り立ちが違う可能性があります。
谷底には周囲から水が集まります。
土砂が運ばれ、堆積します。
地下水位も場所によって異なります。
さらに宅地開発の際には、その上に盛土が行われている可能性もあります。
だからこそ、
↓
旧地形
↓
造成履歴
↓
現在の地盤
という順番で見ていく必要があります。
昔、水田だった。
そこで調査を終わらせるのではありません。
道一本で土地の高さが変わる理由
青葉台を歩いていると、道路の片側と反対側で土地の高さが大きく違う場所があります。
これは、この街を見るうえでとても面白いところです。
現在は一本の道路です。
しかし、造成前まで遡れば、その道路が丘の途中を通っていることもあります。
丘陵地を住宅地にするには、そのままでは道路も住宅もつくりにくい。
そこで高い場所を削る。
低い場所を埋める。
斜面を擁壁で支える。
こうして住宅地として使える土地をつくっていきます。
横浜市も、大規模盛土造成地の調査について、造成前の古い地形図・航空写真と現在の地形データを重ね、その標高差から盛土造成地を抽出しています。
また横浜市によれば、市域北部の青葉区・都筑区・港北区・緑区などでは、法施行後、傾斜地の山を切り、谷部を埋めて平坦化する大規模な造成が多く行われています。
つまり現在の平らな道路だけを見て、
「この辺りは全部同じ土地」
と考えることはできません。
道路のこちら側が切土。
向こう側が盛土。
そのさらに奥に昔の斜面。
そんな可能性もあります。
擁壁は、青葉台ではかなり重要です
青葉台周辺で土地や戸建てを見るなら、建物だけでなく擁壁も見ておきたいところです。
高い擁壁の上に建つ住宅。
道路より一段高い土地。
隣地との間に大きな高低差がある土地。
こうした場所は珍しくありません。
もちろん、
擁壁がある=危険
ではありません。
丘陵地では、高低差を処理するために擁壁が必要になることがあります。
大切なのは、その擁壁がどういうものなのかです。
いつ造られたのか。
構造は何か。
現在の基準に照らしてどうなのか。
ひび割れ、膨らみ、傾き、排水状態はどうか。
建替えの際にそのまま利用できるのか。
やり替えが必要になれば、土地価格だけを見ていたときには想定していなかった費用が発生することもあります。
建物を見る前に、敷地と道路と擁壁を見る。
これはかなり大切だと思います。
恩田方面へ行くと、昔の地形がもっと分かりやすくなります
現在の青葉台駅周辺は開発が進み、元の地形がかなり見えにくくなっています。
一方、恩田方面へ進むと、丘陵と谷の関係を現在でも感じやすくなります。
今回確認した昭和30年代の「72-4 恩田」の地形図を見ると、丘陵の間へ細長い谷が何本も入り込んでいます。
さらに周辺には恩田川沿いの低地があります。
つまり短い距離の中で、
↓
斜面
↓
谷戸
↓
河川沿いの低地
へ地形が変化します。
現在の戸建てやマンションを見るときにも、この違いは無視できません。
裏側に斜面がある。
道路から敷地まで大きな高低差がある。
敷地の一部が擁壁で支えられている。
こうした物件では、建物そのものだけでなく、
まで見てみる価値があります。
見えなくなった川があります
もう一つ、青葉台の土地を見るうえで興味深いのが水路です。
昔の地図には川や水路が描かれているのに、現在そこを歩いても川が見当たらないことがあります。
水路の一部が暗渠になっているからです。
青葉台周辺では、雨堤堀と呼ばれた流れがあり、現在のしらとり川につながっています。
地域史資料によれば、現在の青葉台駅南西付近にあった旧恩田橋より上流側では、現在のしらとり川の一部が暗渠となっています。
街が開発され、道路や住宅が整備される過程で、地上から見えにくくなった水路があります。
ここが大事です。
現在の街だけを見る。
昔の地図だけを見る。
ハザードマップだけを見る。
どれか一つではなく、それぞれを重ねてみる必要があります。
青葉台駅周辺の内水ハザードをどう見るか
横浜市は洪水だけでなく、内水による浸水想定も公開しています。
横浜市の説明では、内水ハザードマップは、最大規模の雨が降った場合に、下水道管や水路からの浸水が想定される区域や浸水深などを示したものです。
想定されている雨量は、1時間あたり153mmです。
青葉台周辺を見ると、河川沿いだけでなく、駅周辺などにも浸水想定が現れる場所があります。
ここで、
「昔の水路が暗渠だから浸水する」
と単純に結びつけるのは適切ではありません。
内水には、地形、下水道、水路、排水能力、降雨量など複数の条件が関係します。
ただし、旧地形と一緒に見ると興味深いことがあります。
昔の谷戸。
そこにあった水田。
水路。
現在の高低差。
そして内水浸水想定。
ハザードマップの色だけを見るのではなく、
なぜ、そこに色が付いているのだろう。
そこから昔の地形へ戻ってみる。
青葉台の土地を見るときには、そのくらい丁寧に見てもいいと思います。
恩田川・奈良川沿いは、また別の地形です
丘陵の谷戸と、河川沿いの低地も分けて考えます。
恩田川や奈良川の周辺には、現在でも比較的平坦な土地が広がっています。
古い地図を見ると、この一帯には水田が広く存在していました。
ここでは、
谷戸の小さな水田
と、
河川沿いに広がる低地の水田
を同じものとして扱わない方がいいでしょう。
洪水ハザードを見ると、河川沿いには浸水想定区域があります。
一方、丘陵地の住宅街で現れる内水や斜面のリスクは、また違った見方が必要です。
土砂災害は「青葉台全体」ではなく斜面を見る
丘陵地では、土砂災害についても確認が必要です。
横浜市の青葉区ハザードマップでは、神奈川県が指定する土砂災害警戒区域等を確認できます。
これも、
「青葉台は土砂災害に弱い」
という話ではありません。
丘陵の上の比較的平坦な土地と、急な斜面の直下・直上では条件が違います。
同じ町内でも違う。
同じ道路沿いでも違う。
だから物件単位で見る必要があります。
現地で、
「なぜここだけ高い擁壁なのだろう」
「なぜこのマンションだけ斜面に入り込んでいるのだろう」
と思ったら、古い地形図とハザードマップを一度見てみる。
その違和感は、意外に大切です。
液状化は、青葉台では場所を分けて考える
液状化についても、横浜市は地震想定別の液状化マップを公開しています。
青葉台周辺は湾岸の埋立地とは地形がまったく違います。
したがって、青葉台全域を一括して液状化リスクの高い地域として捉えるべきではありません。
一方で、河川沿いの低地や谷底などについては、丘陵上部と同じ条件だと考えない方がいいでしょう。
ここでも結論は同じです。
気になる土地なら、個別の地盤資料やボーリングデータまで確認します。
地震では「青葉区」より、その土地と建物を見る
横浜市の青葉区地域防災計画では、元禄型関東地震の場合、青葉区の震度は5強から6弱、一部5弱と想定されています。
同じ被害想定では、青葉区について、
揺れによる建物全半壊1,141棟。
火災による焼失36棟。
建物倒壊による死者5人。
建物倒壊による負傷者147人。
とされています。
ただし、これは将来の被害を物件単位で予測した数字ではありません。
青葉区全体を対象とした被害想定です。
住宅を選ぶときには、
建築時期。
耐震性能。
地盤。
造成履歴。
擁壁。
接道。
周辺の建物密度。
こうした個別条件まで見ていきます。
ここでも同じです。
「切土」と「盛土」は確認しておきたい
丘陵地の宅地を見るときに、もう一つ重要なのが造成です。
高い丘を削った場所が切土。
谷や低い場所を埋めたところが盛土です。
一般論として、元の地山を削った切土地盤と、土を入れて造成した盛土地盤では、地盤の成り立ちが違います。
しかし、
切土だから安全。盛土だから危険。
と単純に判断することもできません。
横浜市が公表している大規模盛土造成地は、谷を埋めた谷埋め型と、傾斜地盤上に盛土した腹付け型などを対象としています。
横浜市の調査では、市内に3,271箇所の大規模盛土造成地が確認されています。
ただし横浜市は、大規模盛土造成地であることが直ちに危険性を示すものではないと明記しています。
ここは非常に重要です。
盛土だから避けるのではありません。
土地の成り立ちを知るための情報として使います。
だから、現地を歩きます
地図だけで土地を判断することもできません。
実際に歩くと、地図では分からないことがあります。
駅から物件まで、本当に平らなのか。
雨水はどちらへ流れそうか。
道路より敷地が高いのか、低いのか。
隣地との高低差はどのくらいあるのか。
擁壁に水抜き穴はあるか。
斜面の上なのか、下なのか。
裏側に丘が迫っていないか。
駐車場への出入りに勾配はないか。
そして、道路一本向こう側の土地と高さが違わないか。
不動産広告の、
「青葉台駅徒歩○分」
という一行だけでは、ここまでは分かりません。
青葉台は、地盤が悪い街なのか
そういう話ではありません。
むしろ青葉台は、多摩丘陵の地形を大規模に整備してつくられた住宅地です。
高台もあります。
丘陵上部もあります。
一方で、
谷戸だった場所。
水田だった場所。
水路があった場所。
盛土された場所。
擁壁のある場所。
河川沿いの低地。
斜面に近い場所。
いろいろな土地が、一つの街の中にあります。
だから、
「青葉台は地盤が良い」
「青葉台は地盤が悪い」
そのどちらでもありません。
これが、古い地図を見たときの一番大きな印象です。
物件を見る前に、その土地がどうできたのかを見る
住宅を探していると、どうしても建物から見てしまいます。
価格。
広さ。
築年数。
間取り。
駅距離。
設備。
もちろん、どれも大切です。
でも青葉台のような丘陵地では、もう一つ見ておきたいものがあります。
昔は丘だったのか。
斜面だったのか。
谷だったのか。
水田だったのか。
水路があったのか。
その後、削ったのか。
埋めたのか。
擁壁で支えたのか。
現在のハザードはどうなっているのか。
そして必要なら、個別の地盤資料まで見る。
そこまで確認しても、未来を完全に予測することはできません。
それでも、
THE LAND BEFORE THE PROPERTY
青葉台を、昔の地形から見てみる
現在の青葉台だけを見ると、整然とした住宅地です。
でも昭和30年代の地図まで戻ると、まったく別の街が見えてきます。
丘があります。
谷があります。
水田があります。
川があります。
細い水路があります。
そして、その地形の上に現在の道路、戸建て、マンション、商業施設があります。
街は変わっても、土地にはその前の姿があります。
私たちは、その土地が良いか悪いかを、古い地図一枚で決めたいわけではありません。
むしろ逆です。
一枚のハザードマップ。
一つの地盤データ。
「丘陵だから大丈夫」。
「水田だから危ない」。
そんな単純な答えにしないために、いくつもの資料を重ねます。
そして最後は、実際の土地を見ます。
不動産は、物件から始めない。
先に、その土地を見る。
この記事で確認した主な資料
横浜市|昭和30年代三千分一地形図「恩田西部・恩田・鴨志田」
三井住友トラスト不動産|旧版地形図に見る「多摩田園都市」青葉台エリアの開発
※ハザードマップ、旧地形図、大規模盛土造成地図等は、個別の土地の安全性や地盤性能を保証するものではありません。実際の不動産取引では、対象地の所在地、造成履歴、擁壁、建築確認・開発許可関係資料、地盤資料等を個別に確認する必要があります。
TAMACHI SHIBAURA SALON
土地から、一緒に見ます。
青葉台で気になっている土地や戸建て、マンションがあれば、
物件だけでなく、旧地形・ハザード・造成・擁壁まで含めて見ていきます。
物件より先に、お話を。