
ポケパーク カントーはなぜ多摩丘陵にある?|よみうりランドの地形・京王線と小田急線のアクセス・上瀬谷との違い
POKÉPARK KANTO / TAMA HILLS — PART 1
ポケモンの森は、
なぜ丘の上にあるのか。
よみうりランドの歴史と多摩丘陵の地形から考える、東京近郊のテーマパーク立地。
2026年2月5日、よみうりランドに「ポケパーク カントー」が開業しました。
600匹を超えるポケモンが暮らす森と街。自然の中を歩きながらポケモンを探し、街ではグリーティングやショー、乗り物を楽しむことができます。
その施設について、土地の視点から考えてみたいと思います。
ポケパーク カントーは、なぜ多摩丘陵の高台にあるのでしょうか。
まず直接の理由は明快です。
1964年に開業した既存の遊園地「よみうりランド」の敷地内に、新しい施設として造られたからです。
ポケパーク カントーのために、首都圏のどこかで新たに広大な土地を取得したわけではありません。
では、そのよみうりランドは、なぜ丘陵の上にあるのでしょうか。
そして、今から東京やその近郊に大型テーマパークを新設しようとしたら、どこに土地があるのでしょうか。
ここからは、不動産会社として土地の地形と使われ方を見ていきます。
この記事の中心は、ポケモンの人気を評価することではありません。
よみうりランドの高低差、京王線と小田急線からのアクセス、周辺のゴルフ場、そして横浜・上瀬谷の広大な土地を比較し、テーマパークと立地の関係を考えます。
1.ポケパーク カントーとは、どのような施設か
ポケパーク カントーは、東京都稲城市のよみうりランド内に開業した、ポケモンの常設施設です。
面積は約2.6ヘクタール。約26,000平方メートルに相当します。
「ポケモンフォレスト」「カヤツリタウン」「ポケパークエントランス広場」を中心に構成されています。
ポケモンフォレスト|約500メートルの冒険
ポケモンフォレストは、全長約500メートルの散策エリアです。
草むらや山道を進みながら、さまざまなポケモンを探します。
重要なのは、森林と高低差を体験の一部として利用していることです。
平坦な敷地にポケモンの模型を並べるのではなく、森の中を歩くことそのものが冒険になります。
カヤツリタウン|ポケモンとトレーナーが集まる街
カヤツリタウンでは、ショップ、グリーティング、ショーなどを楽しめます。
乗り物は「ピカピカパラダイス」と、メリーゴーランドの「ブイブイヴォヤージュ」です。
ポケパーク カントーは、大型ライドを数多く備えた遊園地というより、ポケモンの世界を歩き、出会い、体験することを中心に設計されています。
料金と利用条件
| チケット | 大人料金 | 主な内容 |
|---|---|---|
| タウンパス | 4,700円~ | カヤツリタウンを中心に利用。フォレストへの入場は含まれない |
| トレーナーズパス | 7,900円~ | 指定時間のフォレスト入場とカヤツリタウン利用 |
| エリートトレーナーズパス | 14,000円~ | フォレスト再入場、特別な体験、乗り物の優先搭乗1回分など |
いずれのチケットにも、よみうりランドへの入園が含まれます。チケット料金は来場日により変動します。
乗り物2種類は原則として別料金で、大人1,200円、子ども800円です。時間指定制で、エリートトレーナーズパスには優先搭乗1回分が含まれます。
料金やチケットの販売条件、アトラクションの運用は変更される場合があります。最新情報はポケパーク カントー公式サイトをご確認ください。
2.よみうりランドは1964年開業。既存の遊園地を活かした施設
よみうりランドは1964年に開業しました。
長い歴史を持つ遊園地であり、ポケパーク カントーは、その敷地内に新たに設けられた施設です。
つまり、ポケパーク カントーの立地を説明する第一の要因は、既存の遊園地の存在です。
遊園地には、来場者を受け入れるための交通案内、施設運営の仕組み、周辺との関係など、長年にわたり築かれてきた基盤があります。
新しい施設を単独で一から開業する場合と比べ、既存の遊園地の中に造ることには、さまざまな利点が考えられます。
ただし、ポケパーク カントーの事業者が立地を選んだ内部の判断理由を、外部から断定することはできません。
ここで考えたいのは、なぜ新施設がこの場所にあるかという直接の事情と、首都圏で新たな大型用地を確保する難しさは、別の問題だということです。
その区別をしたうえで、よみうりランド周辺の地形を見ていきましょう。
3.多摩丘陵とは何か|尾根と谷が入り組む土地
多摩丘陵は、多摩川の南側に広がる丘陵地帯です。
東京都稲城市、多摩市周辺から、神奈川県川崎市、横浜市北部へと、起伏のある地形が続いています。
長い時間をかけて河川が地表を削り、尾根と谷が複雑に入り組む地形が形成されました。
高台から隣の高台が見えても、間に谷があれば、いったん下ってから上らなければなりません。
地図の上では近くても、実際に歩くと遠く感じる。
これが、多摩丘陵の土地を理解するうえで大切な点です。
住宅地では、坂道や擁壁、道路の勾配、排水などが問題になります。
一方、遊園地やゴルフ場では、起伏を景観や体験の特徴として活用できる場合があります。
多摩丘陵については、別記事の多摩丘陵と地形の話でも詳しく解説しています。
4.京王線からも小田急線からも、歩いて行くには負担がある
よみうりランドのアクセスを考えると、多摩丘陵の特徴がよく分かります。
利用できる主な鉄道は、京王相模原線と小田急小田原線です。
京王線には「京王よみうりランド駅」があります。
小田急線には「読売ランド前駅」があります。
名前だけを見ると、どちらも遊園地のすぐ近くに感じるかもしれません。
しかし、現地を知っていれば、駅名と実際の歩きやすさは別だと分かります。
京王よみうりランド駅|遊園地は丘の上
京王よみうりランド駅から遊園地へ向かうには、高低差があります。
徒歩で向かう場合、上り坂が負担になります。
そのため、駅からはゴンドラ「スカイシャトル」やバスを利用する方法があります。
ゴンドラは、丘陵の高低差を克服する交通手段であると同時に、景色を楽しむ体験にもなっています。
ただし、天候などによって運行状況が変わるため、訪問前の確認が必要です。
小田急読売ランド前駅|「前」でも入口の目の前ではない
小田急線の読売ランド前駅も、遊園地の入口に隣接しているわけではありません。
駅からは距離があり、周辺には坂道もあります。
徒歩で向かうことはできますが、日常的な駅前施設へ歩く感覚とは異なります。
小田急線側からは、バスなどを利用する方法を検討したい立地です。
不動産広告の徒歩分数では分からないこと
不動産広告で使われる駅徒歩分数は、道路距離を一定の基準で換算したものです。
実際の坂道の勾配や階段、信号待ち、歩く人の体力差まで、その数字に反映されているわけではありません。
同じ徒歩15分でも、平坦な市街地と丘陵地では負担が異なります。
よみうりランドは、その違いを考える分かりやすい例です。
歩いて行きやすいことは、
同じではありません。
5.隣にはゴルフ場|東京よみうりカントリークラブと丘陵の土地利用
よみうりランド周辺には、東京よみうりカントリークラブや、よみうりゴルフ倶楽部があります。
地図を広げると、遊園地だけでなく、ゴルフ場などの広い緑地が丘陵地に配置されていることが分かります。
ゴルフ場は、地形の起伏をコース設計に活用できます。
遊園地も、斜面や高低差を景観やアトラクションに取り込むことができます。
一方、同じ土地を住宅地として開発する場合には、道路の勾配、擁壁、宅地造成、排水など、別の条件が重要になります。
もちろん、丘陵地だからゴルフ場や遊園地になったと単純に断定することはできません。
土地所有や開発の歴史、都市計画、事業者の判断など、複数の要因があります。
それでも、多摩丘陵のまとまった土地がレジャー施設に使われてきたことは、東京近郊の土地利用を考えるうえで興味深い事例です。
6.ポケモンフォレストの110段の階段が示す、地形の魅力と制約
ポケモンフォレストには、110段の階段があります。
公式の利用条件では、5歳未満の子どもとその同伴者は入場できません。
また、急な坂や階段が多いため、フォレスト内では車いすやベビーカーを利用できません。階段を安全に上り下りできることも、利用にあたって重要な条件です。
この点は、地形と施設運営の関係をよく表しています。
森林や坂道は、ポケモンを探しながら冒険する感覚を生みます。
しかし、同じ地形が、利用できる人の範囲を制限することもあります。
ポケモンは、小さな子どもから大人まで、幅広い世代に親しまれているコンテンツです。
だからこそ、自然地形を活かした施設と、誰もが利用しやすい施設とでは、設計の考え方が異なります。
ポケパーク カントーの価値は、自然の中でポケモンを探す体験にあります。
その魅力を理解すると同時に、地形が生む制約も知っておく必要があります。
7.東京には施設が多い。しかし、大型テーマパーク用地は少ない
ここから、話を首都圏全体へ広げます。
東京には商業施設、劇場、美術館、遊園地、スポーツ施設などが数多くあります。
しかし、新たに数十ヘクタール規模のテーマパークを造ろうとすると、候補地は限られます。
必要なのは、単に面積の大きな土地ではありません。
まとまった形状の敷地、建設しやすい地形、来場者を運べる交通網、道路、上下水道、電力、周辺環境との調整などが必要です。
都心では、土地が細かく分かれ、住宅やオフィスが高密度に建っています。
まとまった土地があっても、地価が高く、テーマパークとして長期投資を回収することは簡単ではありません。
郊外へ出れば土地は広がりますが、鉄道駅からの距離、道路事情、地形、自然環境など、別の課題が現れます。
つまり、東京近郊で大型テーマパークに適した土地は、見た目ほど豊富ではないのです。
ただし、よみうりランドが丘陵地にあることだけで、首都圏の用地不足を証明できるわけではありません。
よみうりランドの立地は、既存遊園地の歴史と丘陵地の土地利用を考える事例です。
そこからさらに、新しい大型施設をゼロから造る場合に必要な土地の条件を検討することで、首都圏の用地確保の難しさが見えてきます。
8.東京ディズニーリゾートが舞浜の埋立地にある意味
東京ディズニーリゾートが立地する千葉県浦安市の舞浜地区は、海を埋め立てて形成された土地です。
まとまった土地を確保できたことは、複数のテーマパーク、ホテル、交通施設などを一体的に配置するうえで重要な条件でした。
もちろん、埋立地には液状化や地盤改良、排水など、別の技術的課題があります。
それでも、既成市街地の中で同じ規模の土地を確保する難しさを考えると、舞浜の立地は示唆に富んでいます。
よみうりランドは丘陵地。
東京ディズニーリゾートは埋立地。
立地条件は異なりますが、いずれも都心の高密度な既成市街地とは異なる土地の使い方ができる場所です。
広い土地だけではない。
その土地を使い続けられる条件です。
9.横浜・上瀬谷には、まとまった土地が残されている
横浜市瀬谷区と旭区にまたがる旧上瀬谷通信施設跡地は、約242ヘクタールに及ぶ広大な土地です。
長く米軍施設として利用されてきた土地が返還され、大規模な土地利用転換が進められています。
上瀬谷の特徴は、首都圏にありながら、まとまった土地が残されていることです。
さらに、よみうりランド周辺とは地形の性格が異なります。
上瀬谷は、相模野台地につながる比較的平坦な地形を持っています。
もちろん、全域が完全な平坦地ではありません。
周辺の谷地形、河川、排水、地盤、自然環境などを考慮する必要があります。
それでも、尾根と谷が入り組む丘陵地に比べ、まとまった施設配置や歩行動線を計画しやすい面があります。
なお、約242ヘクタールは旧上瀬谷通信施設跡地全体の面積であり、テーマパーク予定地そのものの面積ではありません。
上瀬谷の開発計画については、上瀬谷テーマパークにポケモンは来る?|三菱地所の開発計画・インバウンド・2030年代の横浜で詳しく紹介しています。
10.よみうりランドと上瀬谷を比較する
| 比較項目 | よみうりランド | 上瀬谷 |
|---|---|---|
| 地形 | 多摩丘陵の高台・斜面 | 相模野台地につながる比較的平坦な土地 |
| 土地利用の歴史 | 遊園地・ゴルフ場など | 旧米軍通信施設・農地など |
| 施設規模 | ポケパーク カントー約2.6ha | 旧通信施設跡地全体約242ha |
| 施設配置 | 既存遊園地の敷地と地形を活用 | 大規模な一体計画の余地 |
| 自然の演出 | 既存の森と起伏を活かせる | 緑地や水辺などを計画的に配置する余地 |
| 歩行環境 | 坂・階段・高低差への配慮が必要 | 比較的平坦な動線を計画しやすい |
| 鉄道アクセス | 京王・小田急から二次交通を利用 | 瀬谷駅等との交通接続が重要課題 |
| 主な課題 | 高低差・拡張性・利用条件 | 輸送力・インフラ投資・地域との調整 |
比較対象の面積の範囲は異なります。約2.6haと約242haを単純に倍率で比較することは適切ではありません。
11.上瀬谷の課題は、土地よりも交通にある
広い土地があれば、大型テーマパークを造れるのでしょうか。
答えは、そう単純ではありません。
テーマパークでは、来場者が施設の中を快適に移動できることと同じくらい、施設まで到着できることが重要です。
よみうりランドの場合、京王線と小田急線の両方を利用できますが、最後の区間に坂道や二次交通があります。
上瀬谷では、大規模な来場需要に対応するため、瀬谷駅を起点とする新たな交通整備事業が進められています。
かつて検討されていた新交通「上瀬谷ライン」は事業化が見送られ、2024年4月に正式な事業廃止の届け出が行われました。
その後、バスなどを活用した新たな輸送システムや、複数の鉄道路線につながる交通ネットワークが検討されています。
2026年には、5月に素案説明会、7月に公聴会が行われるなど、都市計画手続きが進められました。
重要なのは、最終的にどの交通手段が採用されるかだけではありません。
休日の来場者が集中する時間帯に、どれだけの人を安全かつ快適に輸送できるのか。
帰宅時の混雑をどう処理するのか。
周辺の生活道路に過大な負担がかからないか。
こうした点が、上瀬谷の施設計画の成否を左右します。
交通計画の最新情報は、横浜市の新たな交通整備事業で確認できます。
12.大規模開発は、瀬谷・三ツ境・南町田の暮らしをどう変えるか
上瀬谷の開発は、テーマパークだけの話ではありません。
周辺の住宅地や商業地、交通環境にも関係します。
瀬谷駅周辺|来場者と日常利用者の動線
瀬谷駅から上瀬谷へのアクセスが強化されれば、駅周辺の人の流れが変わる可能性があります。
飲食店や小売店にとっては、新たな来街者が生まれる機会になります。
一方、通勤・通学で駅を利用する住民にとっては、混雑や交通動線の変化も確認したい点です。
三ツ境周辺|道路とバス交通
三ツ境周辺では、既存の住宅地と交通網への影響を考える必要があります。
新しい道路やバス路線が整備されても、駅までの距離や既存の道路幅、地形が自動的に変わるわけではありません。
開発の話題だけで住宅の利便性を判断せず、実際にどの道路や交通手段が整備されるのかを確認することが大切です。
南町田周辺|広域道路と商業集積
南町田方面は、既存の商業集積や広域道路との関係から、上瀬谷開発を考える際に無視できない地域です。
ただし、開発によってどの程度の商業需要や賃貸需要が増えるかは、交通計画と施設内容によって変わります。
「大型施設ができるから周辺不動産の価格が上がる」と単純に判断できるものではありません。
不動産会社として重要だと考えるのは、期待を数字に置き換える前に、土地の条件と交通の変化を確かめることです。
結論|ポケパーク カントーの立地から見える、首都圏の土地の条件
ポケパーク カントーが多摩丘陵の高台にある直接の理由は、1964年開業の既存遊園地、よみうりランドの敷地内に造られたことです。
そして、その場所には、多摩丘陵の自然を活かした魅力があります。
森の起伏が冒険の体験を生み出す一方、坂道や階段はアクセスと利用条件に影響します。
京王線と小田急線の双方から歩いて訪れるには負担のある立地であり、周辺にはゴルフ場も広がっています。
一方、東京近郊で新たに大型テーマパークを造ろうとすれば、広さ、地形、交通、周辺環境を満たす土地を確保する必要があります。
横浜・上瀬谷には、比較的平坦なまとまった土地があります。
しかし、土地の広さだけでは大型テーマパークは成立しません。
大量の来場者を運ぶ交通と、長く事業を続けられる収益構造が必要です。
では、ポケモンという世界的なコンテンツには、その規模の施設を支える実力があるのでしょうか。
次の記事では、ディズニー、ジブリ、マリオ、ドラえもん、サンリオなどと比較し、集客力と収益性を考えます。
土地を知ることから、不動産を考える。
同じ駅徒歩分数でも、地形によって暮らしやすさは変わります。
株式会社 blue blooded では、田町・芝浦を拠点に、横浜・青葉台・瀬谷周辺を含む一都三県の住まいと不動産についてお話を伺っています。
株式会社 blue blooded|田町・芝浦サロン
JR田町駅芝浦口徒歩4分
営業時間 9:00~20:00
参考:ポケパーク カントー公式サイト、よみうりランド公式サイト、横浜市「上瀬谷の新たな交通整備事業」等。施設の料金・利用条件・交通運行は変更される場合があります。