
多摩丘陵/硬い丘と、注意すべき谷。」
谷は、確かめる。
都心の住まいの価格は、この数年で大きく上がりました。足もとでは都心の一部に調整の動きも出ていますが、それでも手が届きにくい水準です。各社の市場レポートでも、都心と郊外の「二極化」が指摘されています。そうしたなかで、予算のなかで広さや環境を取りやすい横浜・神奈川、そして東京二十三区の外へ目を向ける方が、確かに増えている実感があります。
その受け皿の一つが、多摩丘陵です。町田・八王子南部・多摩・稲城から、川崎北部・横浜北部(青葉・緑・都筑あたり)まで広がる、なだらかな丘の一帯。今日は、この多摩丘陵の地盤について——強いところと、気をつけたいところを、両方お話しします。
先に、お話を。
多摩丘陵の土台は、上総層群(かずさそうぐん)と呼ばれる地層です。およそ百万年前の海に積もった砂・泥・礫の層で、丘陵の北のふちでは厚さ七百メートルにも達します。長い時間をかけて固まった、比較的しっかりした地層です。その上を、古い相模川が残した御殿峠礫層(西部)やオシ沼砂礫層(東部)が、尾根のあたりで覆っています。
武蔵野台地が、古多摩川の砂礫(武蔵野礫層)と厚い関東ローム層でできた「段丘」であるのに対し、多摩丘陵はそれより古い時代にできた「丘陵」です。固まった海の地層を土台にしている——ここが、多摩丘陵を歩いたときに感じる地盤の手ごたえの正体です。実際、武蔵野台地の地下に伏在する古い埋没谷は、かつて多摩丘陵がもっと北まで広がっていた名残とも考えられています。
土台は硬い。けれど、多摩丘陵は長い年月のあいだに川で深く刻まれ(開析)、尾根と谷が細かく入り組んだ地形になりました。歩くと坂が多く、少し移動しただけで高低差が出るのは、このためです。そして、この起伏こそが、住宅地として造成するときに注意点を生みます。丘を平らな宅地にするには、尾根を削り(切土)、谷を埋める(盛土)必要があるからです。
同じ丘陵の宅地でも、地盤の性格は場所で分かれます。尾根を削った切土の側は、硬い地層の上に載るため安定しています。一方、谷を埋めた谷埋め盛土の側は、人工的に土を盛った新しい地盤で、水が集まりやすく締め固めも不十分になりがちです。大きな地震のときに、この盛土が谷の底や切土との境界を滑り面にして動く「滑動崩落」や、不同沈下が起きることがあります。
難しいのは、平らに造成されているため、地表を見ただけでは切土か盛土か分からないことです。「見晴らしが良い=目の前に尾根がない」宅地が、実は谷を埋めた場所だった、ということも珍しくありません。谷戸(谷の底)の軟らかい地盤や湧水、急な斜面の土砂災害とあわせて、丘陵地では地形の履歴を確かめることが大切になります。
丘陵地こそ、地形の履歴が効いてきます。まず、自治体が公開する大規模盛土造成地マップ(横浜市・川崎市・東京都など)で、盛土のおおよその位置を確認する。次に、造成前の古い地形図や航空写真を今の地図と重ね、もとがどんな尾根と谷だったかを読む。国土地理院の地形分類図で谷底低地や斜面を、ハザードマップで揺れ・土砂災害・浸水のリスクを重ねます。
そのうえで、現地では擁壁や排水の状態、盛土規制法にかかる区域かどうか、そして建物の基礎や地盤改良の履歴まで見て判断します。丘陵地は「同じ町でも一区画で違う」が特に当てはまる地形です。地図一枚では決めず、複数の見方を重ねる。ここは、経験のある人と一緒に読むのが確実です。
郊外だから安い、丘陵だから危ない——どちらも単純にすぎます。多摩丘陵は、硬い土台に恵まれた、暮らしやすい丘です。そのうえで、谷を埋めた区画や急斜面だけは、地形の履歴からていねいに見きわめる。それだけで、選べる範囲はぐっと広がります。
私たちは横浜・神奈川、多摩エリアもお手伝いします(必要なら全国どこへでも動きます)。気になる住所があれば、地盤の観点からも一緒に見てみましょう。
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