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首都直下地震で東京・神奈川はどう壊れるのか?|国の被害想定から揺れ・地盤・火災・インフラを検証【前編】

地盤と、街のなりたち

首都直下地震シリーズ|前編

首都直下地震で東京・神奈川はどう壊れるのか|揺れ・地盤・火災・インフラを地域別に検証

首都直下地震が発生したとき、東京と神奈川の街はどのような被害を受けるのでしょうか。

千代田区や港区のオフィス街、中央区や江東区の湾岸タワーマンション、墨田区や江戸川区の低地、世田谷区や杉並区の住宅街、武蔵野台地、川崎市の臨海部、横浜市の丘陵地。

一口に首都圏といっても、地盤、建物、道路、人口密度、都市機能は大きく異なります。

震度が同じでも被害は同じになりません。液状化が起こる街、火災が広がる街、斜面が崩れる街、建物は残っても電気や水道が止まる街があります。

本記事では、内閣府の2025年12月公表資料、東京都の2022年被害想定、神奈川県の2025年被害想定を参考に、東京・神奈川の地域別の特徴を考察します。

なお、各自治体の想定は震源、季節、時間帯、風速、建物データなどが異なるため、数値を単純比較することはできません。地域別の記述には、地形・市街地構造から考えられるリスクも含みます。

地震後の復興、不動産価格、建築費、円相場、海外資本については後編で詳しく検討します。

第1部|東京・神奈川を襲う地震と地盤の違い

1.首都直下地震は一つではない

首都直下地震という言葉から、東京の真下で一つの大地震が起きる場面を想像するかもしれません。しかし実際には、首都圏に被害を及ぼす複数の地震が検討されています。

東京都の2022年想定では、都心南部直下地震、多摩東部直下地震、大正関東地震、立川断層帯地震などを対象としています。

神奈川県の2025年想定では、都心南部直下地震、大正型関東地震、三浦半島断層群の地震、神奈川県西部地震などを検討しています。

都心南部直下地震で東京の被害が大きくなる場合でも、大正型関東地震では横浜や神奈川県内の広範囲で、さらに深刻な被害が想定されます。

想定地震主に考えるべき被害注意点
都心南部直下地震東京区部・川崎・横浜などの強い揺れ、火災、都市機能停止首都中枢機能への影響が大きい
多摩東部直下地震多摩地域や東京西部の住宅地・交通施設の被害都心だけに注目すると見落とす
大正関東地震タイプ東京・神奈川の広域被害、沿岸部や丘陵地への影響都心南部直下とは被害分布が異なる
三浦半島断層群の地震横須賀・三浦・逗子などの強い揺れ、斜面被害神奈川県南東部の局所的な被害に注意

国の2025年12月公表の想定では、都心南部直下地震による全壊・焼失は最大約40万棟、死者は最大約1万8,000人、経済的被害は約83兆円とされています。

これは首都圏全体を対象とした国の推計であり、東京都が2022年に公表した、都心南部直下地震・冬・夕方・風速8m/sの条件における全壊・焼失約19万4,400棟という建物被害とは、対象範囲や計算条件が異なります。

出典:内閣府・首都直下地震被害想定/東京都の被害想定

2.地盤は「台地・低地・埋立地・丘陵地」に分けて考える

東京・神奈川の地形は、住宅の安全性や道路・上下水道の被害を考えるうえで重要です。

武蔵野台地や下末吉台地のような台地、荒川・隅田川・多摩川沿いの沖積低地、東京湾の埋立地、横浜・川崎の丘陵地では、地震に対する弱点が異なります。

台地は比較的安定した地盤が多い一方、谷底低地や盛土、擁壁が存在します。低地や埋立地では、軟弱地盤による揺れの増幅や液状化が問題になります。丘陵地では切土・盛土の境界、斜面、擁壁の損傷が問題となる場合があります。

ただし、地形分類は個別建物の安全性を直接判定するものではありません。基礎形式、建築年代、耐震性能、地盤改良、地下水位なども確認する必要があります。

第2部|地域別に見る東京・神奈川の被害

1.千代田区・中央区・港区――首都機能そのものが止まる

千代田区には霞が関、大手町、丸の内、永田町など、行政・金融・企業の中枢機能が集中しています。中央区には日本橋、銀座、八重洲、勝どき、晴海、月島があり、港区には新橋、虎ノ門、赤坂、六本木、芝、三田、芝浦、港南などがあります。

これらの地域は耐震性の高い大規模建築物が多く、木造住宅が密集する地域とは被害の性格が異なります。

しかし、大規模なオフィスビルが倒壊しなくても、停電、空調停止、通信障害、鉄道停止、エレベーター停止が重なれば、行政・金融・企業活動は大きく制約されます。

千代田区|建物被害以上に業務継続が問題

大手町・丸の内・霞が関では、建物の構造被害だけでなく、非常用電源、通信回線、データセンターとの接続、社員の出勤、決済機能の継続が重要になります。

皇居周辺や番町・麹町などの住宅地では、台地と低地、建物年代、街路構成が異なります。千代田区全体を一つの地盤として扱うことはできません。

昼間人口が多いため、鉄道が止まった場合の帰宅困難者も重要な問題です。

中央区|日本橋・銀座と勝どき・晴海は被害の形が異なる

日本橋や銀座では、商業施設・オフィス・地下空間・交通網の停止が経済活動に影響します。一方、勝どき・晴海・月島・佃では、湾岸の地盤条件、橋梁、上下水道、マンション設備の被害が生活に直結します。

勝どき・晴海のタワーマンションは、大規模な耐震・制震・免震構造を採用している建物もあります。ただし、免震建物であっても周辺道路や地中埋設管が無傷とは限りません。

隅田川や朝潮運河に囲まれた地域では、橋梁とその接続道路の被害が交通の制約につながる可能性があります。橋が一つ使えないことと、地域全体が孤立することは同じではありませんが、代替経路の確認が重要です。

港区|芝浦・港南と麻布・白金では地形が異なる

芝浦・港南は埋立地や低地が多く、地震時には液状化、地盤の変位、上下水道、道路、港湾施設との接続などが確認事項になります。

一方、麻布・赤坂・白金・高輪・三田には台地や坂、谷が入り組んでいます。台地上は比較的良好な地盤が多いものの、谷底低地、急傾斜地、擁壁の存在を無視できません。

同じ港区でも、芝浦の高層マンションと麻布の低層住宅では、想定すべき被害も復旧の条件も異なります。

関連:芝浦の不動産・地域ガイド/田町の不動産・マンションガイド/東京の高級住宅街と地盤

2.江東区・墨田区・江戸川区――低地と水辺の都市

東京東部には、荒川、隅田川、旧中川、江戸川などの河川と、長い時間をかけて形成された沖積低地が広がります。

軟弱な沖積層が厚い地域では地震動が増幅する場合があり、地下水位や砂質地盤の条件によっては液状化も問題になります。

江東区|豊洲・有明・東雲と亀戸・大島・砂町

豊洲・有明・東雲では、埋立地の地盤条件と高層住宅の設備被害を分けて考える必要があります。大規模なマンションの建物本体が無事でも、受変電設備、エレベーター、給排水設備が停止すれば、日常生活に大きな影響が出ます。

特に高層階では、水の運搬、階段移動、トイレの使用制限が長引く場合、在宅避難が難しくなることがあります。

亀戸・大島・砂町などでは、低地の地盤条件に加えて、建物年代、木造住宅の分布、道路幅員による火災・避難リスクを考える必要があります。

豊洲と砂町では、同じ江東区でも市街地の形成過程と建物構成が異なります。

墨田区|押上・錦糸町・京島・東向島

墨田区では低地の地盤条件と、地域によって異なる木造住宅の密集状況が重要です。

押上・錦糸町周辺には再開発や耐火建築物が集まる一方、京島・東向島などの一部には木造住宅密集地の課題があります。

火災は出火した建物だけの問題ではありません。道路が狭く、倒壊した建物で通行が妨げられれば、消防活動や避難が難しくなる可能性があります。

江戸川区|小岩・平井・葛西・西葛西

江戸川区は広く低地が分布し、河川・運河・地下水の条件を踏まえた検討が必要です。

小岩・平井などの既成市街地では、建物の耐震性、火災、道路閉塞が重要になります。葛西・西葛西の集合住宅地では、液状化や上下水道、交通機能の復旧が生活に影響する可能性があります。

なお、地震による液状化と、大雨・高潮による浸水は異なる現象です。地震の危険性と水害の危険性を混同せず、別々に評価する必要があります。

3.足立区・葛飾区・荒川区・台東区――低地と密集市街地

足立区や葛飾区では荒川・中川・綾瀬川などの流域に低地が広がります。地盤条件に加え、古い木造住宅、細街路、河川を越える橋梁、鉄道の復旧が重要になります。

荒川区では、日暮里周辺の台地縁と、町屋・南千住などの低地で地形が異なります。台東区でも上野の台地と浅草・蔵前などの低地では地盤の成り立ちが違います。

下町という呼び方だけで一括りにするのではなく、河川沿いの低地、旧市街地、再開発地区を分ける必要があります。

建物倒壊と火災が同時に起きた場合、消防車両の進入、避難経路、延焼遮断帯の有無が被害を左右します。

4.品川区・大田区――臨海部と住宅密集地が隣り合う

品川区は大崎・五反田・目黒周辺の台地や谷、品川シーサイド・八潮などの臨海部、戸越・中延・荏原などの住宅地が混在しています。

大田区も田園調布・久が原などの台地、蒲田・大森の低地、羽田・京浜島などの臨海部を抱えています。

臨海部では液状化や物流・港湾機能、住宅密集地では建物倒壊と延焼、台地の縁では斜面や擁壁など、リスクの性格が異なります。

羽田空港へのアクセス、京浜工業地帯の物流、幹線道路が被害を受けた場合には、地域の住宅被害を超えて広域の経済活動に影響する可能性があります。

5.目黒区・世田谷区・渋谷区――台地だから安心とは限らない

目黒区・世田谷区・渋谷区は、武蔵野台地やその縁辺、河川によって刻まれた谷底低地が複雑に入り組んでいます。

渋谷駅周辺は谷地形に位置し、周囲の高台とは地盤の成り立ちが異なります。目黒川沿い、呑川沿い、谷沢川沿いなども、周辺の台地と同じ条件ではありません。

世田谷区では、成城・等々力・深沢・用賀・二子玉川など、同じ区内でも地形が異なります。国分寺崖線周辺では斜面や擁壁、多摩川沿いでは低地や河川堆積物が問題になります。

さらに、古い木造住宅が密集する街区では、地盤より火災や道路閉塞が被害の中心となる可能性があります。

住宅地としての評価が高いことと、災害に対する弱点が少ないことは同義ではありません。

6.中野区・杉並区・新宿区・豊島区――住宅密集地の火災

東京西部の台地上では、液状化の可能性が比較的低い場所が多くあります。しかし、木造住宅の密集、狭い道路、老朽建築物の存在によって、火災や避難のリスクが高まる街区があります。

中野区・杉並区では、中央線や私鉄沿線に形成された住宅地の一部に、木造住宅密集地域の課題があります。

新宿区では新宿駅周辺の巨大な交通結節点、高田馬場・早稲田などの住宅地、神楽坂周辺の坂と谷など、被害の性格が異なります。

豊島区でも池袋の商業・交通機能と、周辺の住宅密集地では対策が異なります。

鉄道停止による帰宅困難者と、住宅街の火災が同時に発生する可能性を考える必要があります。

7.練馬区・板橋区・北区――台地、崖線、河川低地

練馬区には武蔵野台地が広く分布し、比較的安定した地盤が多いものの、河川沿いの谷底低地や古い住宅地も存在します。

板橋区は台地と荒川沿いの低地に分かれ、区内で地形が大きく変わります。

北区では赤羽・王子・滝野川などの台地と、荒川沿いの低地、崖線が重要です。

同じ区内でも、台地上の住宅と崖線下の住宅では地盤条件が異なります。地形図と現地の高低差を確認することが重要です。

8.武蔵野・三鷹・調布・府中・立川・八王子――多摩地域

多摩地域では、武蔵野台地、多摩川沿いの低地、多摩丘陵、さらに西部の山地へと地形が変化します。

武蔵野市・三鷹市などの台地上では、住宅の耐震性、火災、道路、鉄道の被害が重要です。

調布市・府中市・国立市・立川市では、多摩川沿いの低地や河岸段丘、崖線などを考慮する必要があります。

八王子市・町田市・多摩市などでは、丘陵地の造成、盛土、斜面、擁壁の安定性が重要になります。

また、多摩東部直下地震や立川断層帯地震など、都心南部直下地震とは別の想定も確認する必要があります。

9.川崎市――臨海工業地帯から多摩丘陵まで

川崎区|臨海部・工場・港湾

川崎区の臨海部では、埋立地の液状化、道路・橋梁、港湾、工場設備、危険物施設の安全対策が重要になります。

住宅の被害だけでなく、工場や物流拠点の停止が雇用、サプライチェーン、燃料供給に影響する可能性があります。

幸区・中原区|多摩川低地と高密度な住宅地

幸区や中原区には、多摩川沿いの低地や、武蔵小杉周辺の高層住宅・商業施設があります。

武蔵小杉のタワーマンションでは、建物の構造安全性と、停電・断水・エレベーター停止・管理組合による復旧対応を分けて考える必要があります。

多摩川沿いの地盤条件は場所によって異なるため、液状化の可能性は個別の地盤情報で確認する必要があります。

高津区・宮前区・多摩区・麻生区|丘陵と谷

溝の口、梶が谷、宮前平、鷺沼、登戸、新百合ヶ丘などでは、低地・台地・丘陵が入り組みます。

多摩川沿いの低地と、丘陵地の造成宅地では注意点が異なります。盛土造成地、擁壁、斜面、道路の高低差など、敷地単位で確認することが重要です。

10.横浜市――18区を一括りにできない

鶴見区・神奈川区・西区・中区|港湾と都心機能

横浜港周辺、みなとみらい、関内、横浜駅周辺では、臨海部の地盤、地下空間、交通結節点、港湾物流、商業施設の継続性が重要になります。

一方、鶴見区や神奈川区、中区には丘陵地や住宅密集地もあり、沿岸部だけを見て地域全体の被害を判断することはできません。

南区・保土ケ谷区・磯子区・港南区|谷戸と斜面

横浜の住宅地には、谷戸と呼ばれる谷地形、急な坂、造成された斜面が多く存在します。

住宅が直接大きく損傷しなくても、擁壁や道路が崩れれば車両が通れず、復旧工事や生活に支障が出る可能性があります。

土砂災害警戒区域と地震時の斜面崩壊リスクは完全には一致しませんが、地形と造成履歴の確認が重要です。

港北区・都筑区・青葉区・緑区|造成宅地と新興住宅地

新横浜、日吉、綱島、センター北・南、たまプラーザ、青葉台、中山などは、丘陵地と谷地形、造成宅地が混在します。

計画的に整備された住宅地でも、切土と盛土の境界、擁壁、造成年代によって条件は異なります。

新しい街だから一律に安全、古い街だから危険と判断することはできません。

戸塚区・栄区・泉区・瀬谷区・旭区|丘陵と河川低地

これらの地域では、丘陵の造成宅地と河川沿いの低地が混在します。建物の耐震性能だけでなく、道路、橋梁、斜面、擁壁、上下水道の復旧が重要です。

金沢区|臨海部と丘陵地

金沢区では、臨海部の埋立地と内陸の丘陵地で注意点が異なります。港湾・物流施設の被害と住宅地の斜面被害を分けて検討する必要があります。

11.横須賀・三浦・鎌倉・逗子・葉山・湘南

三浦半島周辺では、都心南部直下地震だけでなく、大正型関東地震や三浦半島断層群の地震を考える必要があります。

横須賀・逗子・鎌倉・葉山などでは、海岸低地、谷戸、急斜面、古い住宅地が混在しています。

道路が限られる地域では、斜面崩壊によって集落や住宅地へのアクセスが制約される可能性があります。

また、相模湾沿岸では地震の種類によって津波の検討も必要です。首都直下地震のすべてで同じ津波が発生するわけではありません。

12.神奈川県全体の被害想定

神奈川県の2025年想定では、冬18時の条件で次のような被害が推計されています。

項目都心南部直下地震大正型関東地震
死者(災害関連死を除く)約1,850人約19,780人
災害関連死約4,260人約9,460人
建物全壊約42,920棟約303,300棟
建物焼失約6,450棟約55,270棟
最大避難者約106万人約237万人

注目したいのは災害関連死の規模です。都心南部直下地震では、直接的な死者約1,850人に対し、災害関連死は約4,260人と推計されています。

地震の揺れや火災を生き延びても、避難生活の長期化、医療・介護サービスの中断、生活環境の悪化などによって命が失われる可能性があります。

建物が倒壊しなかったことと、震災後も安全に暮らし続けられることは同じではありません。

出典:神奈川県・地震被害想定調査(2025年)

第3部|火災・インフラ停止と生活への影響

1.火災は建物の耐震性とは別の問題

建物が揺れに耐えても、周辺で火災が広がれば住み続けられない場合があります。

特に木造住宅が密集する街区では、建物の倒壊、道路閉塞、同時多発火災、消防活動の遅れが重なる可能性があります。

火災危険度は区全体で判断せず、町丁目や街区単位で確認する必要があります。

2.停電と高層マンション

高層マンションでは、エレベーター、給水ポンプ、機械式駐車場、オートロック、共用照明など、電力に依存する設備が多くあります。

非常用発電機があっても、稼働時間、燃料、接続される設備は建物ごとに異なります。すべての設備が通常どおり使えるとは限りません。

高層階に住む高齢者や乳幼児のいる家庭では、階段による移動や水の運搬が大きな負担になる可能性があります。

3.断水・下水道停止と在宅避難

水道の供給が再開しても、建物内の配管や排水設備が損傷していれば使用できない場合があります。

下水道が使えない状態でトイレを流すと、逆流や漏水などの二次被害につながるおそれがあります。

在宅避難が可能かどうかは、建物の安全性に加え、飲料水、生活用水、携帯トイレ、電源などの備えによって変わります。

4.鉄道停止と帰宅困難者

東京駅、新宿駅、渋谷駅、池袋駅、品川駅、横浜駅、川崎駅などの巨大な交通結節点が機能を失えば、帰宅困難者が大量に発生する可能性があります。

東京都の2022年想定では、帰宅困難者は約453万人と推計されています。

無理に徒歩帰宅する人が増えれば、道路の混雑によって救急・消防・物資輸送の妨げになる可能性があります。

5.道路・橋梁・港湾・空港

東京港、横浜港、川崎港は物流の重要拠点です。港湾設備、岸壁、臨港道路が被害を受ければ、建設資材や燃料、生活物資の輸送に影響する可能性があります。

首都高速、湾岸道路、東名高速、中央自動車道、第三京浜などの主要交通網が制約されれば、復興工事の速度にも影響します。

道路や橋梁の復旧は、個々の住宅やマンションの修繕を進める前提条件になる場合があります。

6.病院・行政・通信・金融

病院の建物が無事でも、電源、水、医療ガス、医薬品、スタッフの確保ができなければ診療機能は制約されます。

行政機関や金融機関も、庁舎・オフィスの安全性だけでなく、通信、電源、職員、データ、決済機能の継続が重要です。

東京の首都機能が止まれば、被害は東京・神奈川の不動産市場にとどまらず、日本全体の経済活動に及びます。

7.発災直後から1か月後まで

時期主な問題不動産・生活への影響
発災直後強い揺れ、倒壊、火災、交通停止安全確認、避難、帰宅困難
数日後停電、断水、通信障害、物資不足在宅避難の限界、仮住まい需要
1週間後復旧格差、設備故障、避難生活の長期化地域間の居住環境格差
1か月後以降修繕費、工事待ち、事業停止移転・売却・賃貸需要の変化

この時間軸は、東京都が公表する被害シナリオを参考に整理したものです。実際の復旧期間は地域や施設によって異なります。

不動産を考える際に必要な視点

地震への強さを考えるとき、耐震等級や築年数だけで判断することはできません。

土地の地形、造成履歴、液状化、擁壁、建物の構造、管理状態、非常用電源、給排水設備、道路、周辺の火災危険度、そして復旧に要する時間まで考える必要があります。

また、地震後の不動産価格は、被害が大きい地域ほど必ず下がり、被害が小さい地域ほど必ず上がるという単純なものではありません。

街の復旧能力、企業や住民が戻るかどうか、建築費、金利、為替、資金力によって、震災後の不動産市場は変わります。

地震で建物が壊れることと、街の価値が失われることは同じではありません。しかし、街が復興することと、元の所有者がその価値を取り戻せることも同じではありません。

参考資料・関連記事

※本記事の公的被害想定は、震源、季節、時間帯、風速等を仮定したシミュレーションです。地域別の記述には地形・市街地構造から考えられるリスクを含み、個別物件の被害を断定するものではありません。

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