
一件で、年が越せてしまう業界。|仲介手数料はなぜ高いのか
不動産という仕事について
一件で、
年が越せてしまう業界。
なぜ、不動産屋は信用されないのか。担当者の当たり外れが、なぜこんなに大きいのか。——その答えは、個人の資質ではなく、業界の「構造」にあります。少し、内側の話をさせてください。お客様が、賢く相手を選ぶために。
不動産の仲介手数料は、高い。売買なら、物件価格の3%+6万円が上限です。五千万円の家を仲介すれば、百七十万円ほど。一件で、年が越せてしまう。賃貸でも、家賃一か月分。一件決めれば、その月は暮らせる。
この「一件で食える」構造が、実はすべての歪みの、出発点になっています。
数をこなさなくても、
食えてしまうと
人は、変わる必要がなくなります。一件の手数料が大きいから、たくさんのお客様に、丁寧に向き合わなくても、なんとか回ってしまう。いい加減でも、食えてしまう。だから、いい加減が、なくならない。
物件について、根拠を持って説明できない。都合の悪いことを聞かれると、はぐらかす。「まあ、そういうものです」で逃げる。——心当たりのある方も、いらっしゃるかもしれません。それは、その担当者が特別に不誠実なのではなく、そうでも食えてしまう構造が、そうさせているのです。
二つの、悪い循環
この構造は、二つの悪循環を生んでいます。図にすると、こういうことです。
① お金が、人に還らない
高い手数料 → その原資を狙って、物件情報サイトが広告費を集める → 各社は広告費を出し合う消耗戦 → 稼ぎは広告に消え、働く人に還らない(労働分配率が低い)→ 給料が上がらず、優秀な人が育たず・残らない → 仕事の質が下がる → それでも高い手数料は入るので、回ってしまう
② 知識が、分断されている
売買・賃貸・投資・テナント・管理・開発——それぞれが縦割りで特化 → 横断的に不動産を語れる人が、驚くほど少ない → 一件一件を、深く論じられない → 「この物件はどうなのか」に、根拠で答えられない → 世間は「不動産屋なんて、その程度」と見る → 期待されないから、質も上がらない
二つの輪が、かみ合って回り続けている。
お客様が、なんとなく「不動産屋は信用ならない」と感じている。その感覚は、正しいのです。あなたの気のせいでも、運が悪いのでもない。構造が、そういう業界を作ってきた。だから、疑いながら付き合うのは、賢明なことです。
私は、この業界を、外から批判したいのではありません。自分もその中にいる一人として、この構造を、変えたいのです。
変えるべきは、
「手数料」の一点です。
すべての歪みは、高すぎる手数料から始まっています。ならば、そこを変えればいい。私たちは、実需のお取引では、手数料の上限をいただきません。七割ほどから。そして——条件も手数料も、お客様に先に決めていただく。
手数料が適正になれば、「一件で年を越す」構造は成り立ちません。数をこなさず、いい加減なままでは、食えなくなる。本当に価値を出す者だけが、残るようになる。高い手数料を前提にした、広告費の出し合いからも、抜けられます。
大げさに聞こえるかもしれません。たった一社の、小さな試みです。でも、この一点を変えることが、私が不動産の世界でやりたい、ただひとつのことです。
ただし、「無料」では
構造は変わらない
ここで、誤解のないように申し添えます。「手数料を安く」と言うと、「無料」を掲げる会社と同じに聞こえるかもしれません。でも、それは違います。「無料」は、この構造を、変えません。
手数料を無料にする会社は、その分を、どこかで取り戻す必要があります。自社が売主の物件だけを勧めたり、広告料の高い物件へ誘導したり。あるいは、無料で大量のお客様を集めて、一件ずつは薄く、数で稼ぐ。——これは結局、「数を追う」構造そのものです。ポータルへの広告費を、いっそう膨らませることにもなる。無料は、歪みを壊すどころか、別の形で深めてしまう。
だから私たちは、「無料」にはしません。ゼロでも、上限いっぱいでもなく、いただくべき分だけを、適正に。その額は、お客様に決めていただく。無料という安さで選ばれたいのではありません。
ポータルは、敵ではない
もう一つ。物件情報サイト——ポータルについても、誤解されたくありません。私は、ポータルを敵視しているわけではありません。たくさんの物件を、一覧で見られる。あの仕組みは、お客様にとって、間違いなく便利です。入口としては、とても優れている。
問題は、ポータルそのものではなく、そこに「依存」する業者の生き方の方です。高い手数料を原資に、広告費を出し合い、少しでも上に表示されようと競う。その消耗が、めぐりめぐって、お客様の負担と、仕事の質の低下に返ってくる。ポータルを使うこと自体が悪いのではなく、そこに寄りかかって数を追うことが、構造を回し続けている。
私たちは、ポータルを入口として使うことはあっても、そこに依存はしません。手数料を適正にすれば、数を追う必要がないからです。そして、いつか——ポータルの側も、業者の高い手数料からの広告費に頼らない収益のかたちを持てたなら。そのとき業界は、もっと健全になるはずだと、静かに思っています。
不動産は、物件から始めない。
先に、お話を。手数料も、条件も、あなたが決める。
もし、この考え方に少しでも頷いていただけたなら、一度、お話を聞かせてください。売買でも、賃貸でも。他社で進めているお話でも、匿名でも構いません。「この会社は、他と違うのか」——それを、確かめに来てください。
株式会社 blue blooded / 田町・芝浦 代表 松村 ★Googleクチコミ 4.9 / 完全予約制
田町・芝浦・三田を拠点に、港区・中央区・品川区・江東区、湾岸エリアを中心として、一都三県から全国、海外にお住まいの方まで。
※本記事は不動産取引の一般的な構造について、当社の見解を述べたものです。