
インテル・ミラノのオーナーは誰?|中国の蘇寧から米ファンドへ、サン・シーロ買収まで
インテリスタの不動産論|第五弾
インテル・ミラノのオーナーは誰?|中国の蘇寧から米ファンドへ、サン・シーロ買収まで
※ここで言うインテルは、イタリア・ミラノのサッカークラブ「FCインテルナツィオナーレ・ミラノ」(Inter Milan)。半導体メーカーのIntel(インテル)とは別物である。
応援しているチームは、ずっと同じだ。
持ち主は、4回替わった。
インテル・ミラノを見てきた間に、持ち主はミラノの石油一族から、インドネシアの実業家、中国の大企業、そして米国の投資ファンドへと替わった。そして2025年、インテルは本拠地サン・シーロの持ち主にもなった。
先に結論。インテル・ミラノの今のオーナーは、米国の投資ファンドオークツリー・キャピタル(2024年5月から)。そのオークツリーの親会社は、カナダのブルックフィールド(2026年8月に完全子会社化)。会長はジュゼッペ・マロッタ(2024年6月から)である。
前のオーナーだった中国の蘇寧(スーニン)が、オークツリーから借りた金を返せず、クラブがファンドに渡った。
インテル・ミラノの歴代オーナー一覧
| 時期 | オーナー | どんな資本か | 主なタイトル |
|---|---|---|---|
| 1995〜2013年 | マッシモ・モラッティ | ミラノの石油会社サラスの一族 | UEFAカップ(1998)、セリエA5連覇、三冠(2010) |
| 2013〜2016年 | エリック・トヒル | インドネシアの実業家 | なし |
| 2016〜2024年 | 蘇寧(張一族) | 中国の家電・小売の大企業 | スクデット(2021、2024)、コッパ・イタリア、CL準優勝(2023) |
| 2024年〜 | オークツリー(親会社ブルックフィールド) | 米国の投資ファンド(カナダの資産運用会社の傘下) | スクデット(2026)、CL準優勝(2025) |
※2024年のスクデット(20回目)は、蘇寧の時代の最後のシーズンに取ったもの。
マッシモ・モラッティ(1995〜2013年)|感謝と尊敬しかない
モラッティ家は、サラスという石油精製会社を営むミラノの一族だ。1995年にインテルを買ったマッシモ・モラッティは、私財を惜しまずスターを集めた(第一弾)。
なぜクラブを手放したのか。家業の石油会社が傾いたからである。サラスは2012年に約9,000万ユーロ、2013年には約2億7,000万ユーロの赤字を出した。インテルも毎年7,000万ユーロを超える赤字だった。石油で稼いだ金でクラブを支える形が、もう続かなかった。
モラッティには、本当に感謝と尊敬しかない。
試合に勝てなくても、文句一つ言わなかった。何年も優勝できない間も金を出し続け、ファンと同じように負けを受け止めていた。あんな会長は、もう出てこないと思う。
エリック・トヒル(2013〜2016年)|本当の意味での暗黒時代
2013年11月、モラッティはインドネシアの実業家エリック・トヒルに株式の過半数を売った。
この時代は、本当の意味での暗黒時代である。チームは弱く、補強も大したことがない。タイトルは一つもなかった。何のためにオーナーになったのか、今でも分からない人だ。
勝てない時代は、モラッティの頃にもあった。でも、あの頃は「次は誰が来るか」という楽しみがあった。トヒルの時代には、それもなかった。
蘇寧(2016〜2024年)|中国の大企業は、インテルに金を使ったのか
2016年6月、中国の大企業、蘇寧グループがインテルの過半数を取得した。2018年には、創業者の息子スティーブン・チャン(張康陽)が26歳で会長に就いた。
中国の大企業がオーナーなら、大型補強が続くのではないか。そう期待したファンは多かったはずだ。でも実際には、インテルに莫大な金が使われた印象はない。自国には金を使っても、イタリアには入れない。そんな感じだった。
背景には事情もある。2017年8月、中国政府は資本の国外流出を抑えるため、海外のスポーツクラブの買収などを「制限」の対象にした。さらに蘇寧自身も本国で業績が悪化していく。中国の親会社から、イタリアのクラブへ金を送りにくくなったのだ。
コンテのスクデット、インザーギの立て直し
蘇寧の時代、インテルは2020-21年に久しぶりのスクデットを取った。監督はアントニオ・コンテ。
コンテは、ユヴェントスでもチェルシーでも就任1年目に優勝した監督だ。インテルでも2年目にスクデットを取った。ただ、コンテのチームは優勝の後にバラバラになる。インテルも同じだった。優勝した夏、コンテは去り、ロメル・ルカクとアクラフ・ハキミも売られた。
そこからチームを立て直し、今の土台をつくったのは後任のシモーネ・インザーギだと思っている。インザーギは、ある意味で新しい戦い方をつくった。相手に「簡単に点が取れそうだ」と錯覚させて前に出させ、実際は自分たちが多彩なカウンターで、あっさり点を取る。そのスタイルを確立した。2023年にはチャンピオンズリーグ決勝まで進み、2024年には20回目のスクデット、2つ目の星を胸に付けた。私はコンテより、インザーギを評価している。
年12%の借金と、オークツリーへの身売り
蘇寧の時代の終わりは、借金だった。2021年、蘇寧はクラブを支えるため、米国のファンド、オークツリーから2億7,500万ユーロを年12%で借りた。3年後の返済額は約3億9,500万ユーロに膨らみ、返せなかった。2024年5月、担保になっていたクラブはオークツリーのものになった。
オークツリー(2024年〜)|ファンドの持ち主で、何が変わったか
オーナーが投資ファンドになると聞いて、心配した人もいたと思う。でも私は、あまり気にならなかった。蘇寧でもオークツリーでも、金がないことに変わりはないからだ。
実際、オークツリーになっても何も変わらなかった。大きな金がインテルに入ってくることはなく、限られた予算で戦う日々が続いた。
持ち主が替わった翌月、強化責任者だったマロッタが会長に就いた。現場を知る人がクラブのトップに立ち、限られた金で、見る目で戦う(第二弾)。2025年にはインザーギが去り、クリスティアン・キヴが監督になった。そして2025-26年、インテルは21回目のスクデットを取った。
親会社はカナダのブルックフィールドへ|風向きが変わりつつある
動きがあったのは今シーズンだ。オークツリーの親会社、カナダの資産運用会社ブルックフィールドが残りの株式を買い取り、2026年8月にオークツリーの完全な親会社になった。インテルは、さらに大きな資本の傘の下に入った。
実際、今季の補強は10年ぶりくらいに十分なものだった(第四弾)。何が変わるのかは、まだ分からない。それでも、風向きは変わりつつある。今季こそ、チャンピオンズリーグで結果を出してほしい。
サン・シーロはなぜ売られたのか|インテルはスタジアムの持ち主になった
持ち主の話は、クラブだけでは終わらない。2025年、インテルとミランは、本拠地サン・シーロをミラノ市から買った。
私もサン・シーロに行ったことがある。正直に言うと、古くて、芝の状態も良くなかった。
インテルとミランは、なぜ同じスタジアムを使うのか
サン・シーロは1926年、もともとミランのために建てられた。インテルが本拠地にしたのは、第二次世界大戦後の1947年からだ。その後スタジアムはミラノ市の持ち物になり、2つのクラブが市から借りて使ってきた。ライバル同士が同じ家に住んでいる。ダービーの日は、北と南で青黒と赤黒が向かい合う。
サン・シーロとメアッツァ|どちらが正しい呼び方か
正式名は「スタディオ・ジュゼッペ・メアッツァ」。1980年、インテルとミランの両方でプレーした伝説のストライカー、メアッツァの名が付けられた。「サン・シーロ」は地区の名前で、今も多くの人がこう呼ぶ。どちらも間違いではない。
売却と新スタジアム計画
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2025年9月29日 | ミラノ市議会が、サン・シーロと周辺の土地の売却を承認 |
| 2025年11月5日 | インテルとミランへの売却が完了。価格は1億9,700万ユーロ |
| 2026年2月 | ミラノ・コルティナ冬季五輪の開会式がサン・シーロで行われる |
| 2026年3月 | 売却をめぐり、ミラノの検察が9人を捜査対象にしたと報道 |
| 〜2032年 | 約12億ユーロの新スタジアムを建設し、今のスタジアムは取り壊す計画。EURO 2032に間に合わせる |
なぜ売られたのか。一つは古さだ。屋根の影で芝が育たないのは、昔からの悩みである。もう一つは金だ。ヨーロッパの強豪は自前のスタジアムで、レストランやイベントで稼いでいる。借り物のスタジアムでは、それができない。金のないインテルにとって、自分たちのスタジアムは強いチームの土台になる。
新スタジアムの設計は、イギリスのフォスター・アンド・パートナーズとマニカ。1億9,700万ユーロという価格には、イタリアでも「安すぎる」という声が出た。捜査の行方は、まだ分からない。
インテリスタとして、不動産屋として心配なこと
イタリアは、どこを掘っても文化財が出る国だ。大きな工事になるほど、地面の下から何かが出てくる可能性がある。
実は弊社でも、購入した土地から文化財が出て、大変なことになった経験がある。発掘調査が必要になれば、費用がかかり、工事も止まる。計画どおりに進まないのが、土地の工事だ。新しいスタジアムが、予定どおり2032年に間に合うのか。そこも見守っている。
クラブのオーナーと、不動産のオーナーは別物
クラブの持ち主の話を書いてきたが、不動産のオーナーとは、まったくの別物だと思っている。
クラブは、楽しんで見るものだ。持ち主が誰になっても、勝っても負けても、テレビの前で一喜一憂する。インテル劇場を楽しむ。ファンとの関係は、それでいい。
不動産のオーナーは違う。土地や建物を持つということは、そこに住む人、借りる人、家族の暮らし、ときには相続や事業まで背負うことだ。だから私は、不動産のオーナーには本気で寄り添う。売るのか、貸すのか、持ち続けるのか。その判断の一つひとつに、楽しんで見ているだけの余裕はない。
インテルは、楽しんで見る。
不動産のオーナーには、本気で寄り添う。
インテルを見続けてきたのと同じ根気で、不動産の仕事にも向き合っている。
参考・公式リンク
インテル公式サイト(Inter.it) ↗ AFPBB:インテル、米ファンドのオークツリーが経営権取得 ↗ CNN:インドネシア人富豪がインテル買収(2013年) ↗ Calcio e Finanza:サラスの赤字とインテル売却 ↗ Calcio e Finanza:中国、欧州サッカーへの投資を制限(2017年) ↗ Calcio e Finanza:ブルックフィールド、オークツリー買収完了(2026年8月) ↗ ANSA:サン・シーロのミラン・インテルへの売却が完了(2025年11月) ↗ ANSA:サン・シーロ売却で9人を捜査(2026年3月) ↗ Goal:世界の共有スタジアム ↗不動産の話を、もう少し
首都直下地震の後、不動産価格はどうなるのか|復興後の東京の土地は誰のものか → 不動産は、物件から始めない|私たちの考え方 → そのまま決める前に|不動産セカンドオピニオン → 戸建てを買う前に見ること|土地・建物・暮らし → 東京の地盤を地形から見る →※オーナーの変遷、金額、成績、スタジアム売却は公開されている報道・記録をもとにしています。サラスとインテルの赤字額は報道ベースの数字です。新スタジアム計画は今後変わる可能性があります。