
東京の地盤を地形から見る|マンション・戸建て・土地を買う前に知りたい台地・谷・低地・埋立地
地盤と、街のなりたち
東京の地盤を地形から見る|戸建て・マンションを買う前に知りたい台地・谷・低地・埋立地と地震対策
2026.08.26
東京の地盤は「台地だから強い」「埋立地だから弱い」だけでは判断できません。武蔵野台地、多摩丘陵、埋没谷、低地、湾岸の埋立地から、戸建ての基礎・耐震、マンションの耐震・制震・免震まで、不動産購入前に知っておきたいポイントを解説します。
blue blooded / 地盤から考える不動産
「何区だから」ではなく、
「その土地、その建物はどうなのか」。
東京の地盤を地形から見る
「東京で地盤が強い場所はどこですか」——不動産の仕事をしていると、よく聞かれる質問です。特に土地や戸建てを探している方にとって、地盤は気になるところだと思います。
- 武蔵野台地なら安心なのか。
- 世田谷は地盤が強いのか。
- 多摩丘陵なら大丈夫なのか。
- 低地や埋立地は避けた方がいいのか。
- マンションなら地盤をどこまで気にするべきなのか。
けれど東京の地盤を見ていくと、話はそれほど単純ではありません。東京の街は、台地、丘陵、谷、低地、埋立地が複雑に組み合わさってできています。同じ区内でも、少し歩いただけで地形が変わる場所があります。
そして実際に不動産を購入するのであれば、地形だけでは足りません。戸建てなら、その土地がもともと何だったのか。盛土なのか、切土なのか。擁壁はどうなっているのか。どのような基礎が使われているのか。建物の耐震性能はどうなのか。マンションなら、建物をどの地盤で支えているのか。耐震なのか、制震なのか、免震なのか。地震後にエレベーターや電気、水道をどこまで維持できるのか。
「何区だから」ではなく、「その土地、その建物はどうなのか」。東京で不動産を選ぶとき、まず知っておきたいのがこの考え方です。
東京の地形を、大きく分けてみる
東京の地形は大きく見ると、丘陵、台地、谷、低地、埋立地という違いがあります。西側には多摩丘陵や武蔵野台地が広がり、東へ向かうにつれて低地が増え、その先には東京湾岸の埋立地があります。
ただし、きれいに境界線が一本引かれているわけではありません。台地の中には川が削った谷があります。昔の川や谷が、現在の街並みからは分からなくなっている場所もあります。丘陵地には造成された住宅地があります。低地にも、長い時間をかけて街として形成されてきた場所があります。東京の地盤を考えるときに大切なのは、「台地か低地か」という二択ではなく、その街がどういう地形の上につくられてきたのかを見ることです。
東京を見るなら、現在の地図だけでは足りない
東京の土地を見るとき、私たちは現在の住所だけを見ません。時間を少し巻き戻して、その街がどうつくられてきたのかを見ます。
江戸城、現在の皇居を中心に江戸の地形を見ていくと、現在の都心東部から湾岸方向には、かつて海や干潟、低湿地だった場所が広く存在していました。その後、江戸の街は埋立てや河川改修を重ねながら東へ、そして海側へ広がっていきます。一方、西側には武蔵野台地が広がり、その台地を大小の川が削って谷をつくってきました。
だから東京の地盤を見るとき、現在の行政区だけで判断するより、「ここは昔、どんな場所だったのか」まで遡ってみる。古地図や旧版地形図を見る理由は、そこにあります。
地名にも、昔の地形が残っている
街の名前から、地形の痕跡が見えることもあります。例えば渋谷。現在は巨大な繁華街ですが、「谷」という字が示すように、周囲の台地から低くなる谷地形に位置しています。
もちろん、地名だけで地盤を判断することはできません。ただ、「谷」「沢」「窪」など地形を連想させる地名に出会ったら、一度昔の地形を調べてみる。それは土地を知る入口になります。地名は答えではありません。調べるきっかけです。
川は、現在流れている川だけを見ない
水害を考えるときも、現在の地図だけでは足りません。多摩川や荒川のような大きな河川については、現在の流路だけでなく、氾濫原や旧河道など、その川が長い時間の中でどのように流れてきたのかを見ます。
一方、東京には現在の地図では見えにくくなった小さな川も数多くあります。都市化の過程で暗渠となり、その上が道路や遊歩道になっている場所もあります。大きな河川、昔の流路、小さな川や暗渠、周囲との高低差、過去の水害記録、そして現在のハザードマップ。これらを重ねて考えます。川が見えないから、水と無関係な土地とは限りません。
1 武蔵野台地
東京の地盤を調べると、まず目にすることが多いのが武蔵野台地です。東京西部から都心方向へ広がる大きな台地で、一般に低地と比べれば標高があり、住宅地として長く利用されてきました。
ただし、武蔵野台地の上ならどこでも同じ条件というわけではありません。台地の中にも谷があります。崖線があります。川があります。造成された土地もあります。「武蔵野台地」という大きな地形を確認したあとに、さらにその土地の足元を見る必要があります。
▸ 武蔵野台地はどこからどこまでか|地盤と埋没谷2 多摩丘陵
東京西部から神奈川県北部にかけて広がる多摩丘陵。丘陵という名前から「高い場所だから地盤も安心なのでは」と思われることがありますが、戸建てを考える場合には造成も確認したいところです。
丘を削った切土。谷などを土で埋めた盛土。同じ住宅街の中でも、土地がどのようにつくられたかによって条件が違うことがあります。さらに丘陵地では、擁壁、高低差、前面道路、排水なども重要です。地盤の強さと、土地としての買いやすさは同じではありません。
切土・盛土は「あるか」だけではなく、程度を見る
造成そのものが悪いわけではありません。東京の住宅地で造成を完全に避けることは現実的ではなく、適切に設計・施工された造成地も数多くあります。ただ、私たちが土地や戸建てを見る場合、大きな高低差をつくった造成は慎重に見ます。特に1.5メートルを超えるような擁壁や、大きな切土・盛土を伴う土地は、積極的にはおすすめしません。
地震時だけの問題ではありません。擁壁の構造、適法性、排水、維持管理、将来のやり替え、建替え、そして売却まで、土地を所有している間に長く付き合う問題になる可能性があるからです。「今、家が建っているから大丈夫」だけではなく、10年後、20年後にこの土地をどう扱えるかまで考えます。
▸ 多摩丘陵/硬い丘と、注意すべき谷3 谷と埋没谷
東京を歩いていて、そこに昔、谷があったと気づく人は多くありません。道路があり、住宅があり、マンションが建っています。しかし地形の歴史を調べると、昔の川や谷の存在が見えてくることがあります。現在は地表から分かりにくくなっている埋没谷もあります。
「谷だから危険」という単純な話ではありません。重要なのは、その土地がどのように形成されてきたかを知ることです。古い地形図、土地条件図、ハザードマップなどを重ねると、現在の住所だけでは見えなかった土地の背景が見えてきます。
▸ 地下に、埋もれた谷がある|東京の埋没谷4 世田谷
世田谷区は戸建て需要の大きな地域で、地盤について検索する方も多いエリアです。ただ、世田谷区全体を一つの地盤として考えるのは少し無理があります。台地があります。谷があります。川があります。高低差のある場所があります。
「世田谷区は地盤が強いですか」という質問から始めるのはいい。ただ、最終的には「この土地はどうなのか」まで落とし込む必要があります。
▸ 世田谷は安全か、新宿は治安が悪いか|地盤×治安5 低地
東京の東側には低地が広がっています。川によって運ばれた土砂などによって形成されてきた地域も多く、台地とは地盤の成り立ちが違います。だからといって、低地だから住んではいけないという話ではありません。大切なのは、地形、浸水想定、液状化、建物、基礎、避難経路などを分けて確認することです。
湾岸だから、水害リスクが一律に高いわけでもない
「湾岸=水害に弱い」と一括りにすることもできません。湾岸の埋立地には、比較的新しい時代に都市基盤が整備された地区もあり、上下水道や雨水排水などのインフラが計画的に整備されている場所があります。洪水や内水のハザードマップを実際に見ると、内陸部の河川沿いや谷底低地などより、想定リスクが低く示される湾岸地区もあります。
一方で、高潮、液状化、停電や断水、道路などのインフラ被害は別の問題です。「湾岸だから危険」でも、「ハザードマップに色がないから安全」でもありません。洪水、内水、高潮、液状化、地震を分けて見ることが大切です。
6 湾岸・埋立地
東京湾岸には埋立地が広がっています。芝浦、月島、勝どき、晴海、豊洲、有明、お台場など、現在では大規模な住宅地やオフィス街になっている場所もあります。
「埋立地だから地盤が弱い」という言葉だけでは、実際の不動産を判断するには情報が足りません。特にマンションの場合には、地表付近の地盤と、建物をどの支持地盤で支えているのかは分けて考える必要があります。一方、道路、上下水道などの周辺インフラや液状化については別の確認が必要です。
▸ 湾岸の地盤は本当に弱いのか|埋立地と液状化を検証地震を考えるなら、地盤だけでは足りない
地震に強い住まいを考えるとき、「地盤が強い場所を選びたい」と考えるのは自然なことです。しかし、住宅の地震への強さは地盤だけでは決まりません。戸建てもマンションも、地盤、基礎、建物構造、耐震性能を一緒に見る必要があります。
戸建ては、地盤から建物までつなげて見る
戸建ての場合、まず地形を見る。次に、その土地が切土なのか、盛土なのか、昔は何だったのかを見る。そして地盤調査。その結果を受けて基礎や、必要であれば地盤改良が検討されます。一般的な住宅ではベタ基礎や布基礎などがありますが、「ベタ基礎だから安心」と名称だけで判断するものでもありません。必要に応じて、表層改良、柱状改良、鋼管杭などの地盤対策が行われる場合もあります。
地盤改良されている=良い土地、ではない
戸建ての資料を見ると、「地盤改良済み」「柱状改良を実施」「鋼管杭施工」といった記載があります。必要な地盤調査を行い、その結果に応じて適切な地盤改良を行うことは重要です。通常は必要な調査や対策を踏まえて建築されます。しかし、購入する側にはもう一つの見方があります。
「柱状改良をしているから安心」ではなく、「なぜ柱状改良が必要だったのか」。こちらを見ることです。柱状改良そのものを良い、悪いと評価するのではありません。その土地の地盤条件に対して必要だったから、その工法が採用された。ならば、地盤調査では何が分かったのか。どの深さまで軟弱な地層が確認されたのか。どのような改良が行われたのか。周辺の土地はどうなのか。そこまで資料を遡って考えます。対策がされていることと、もともとの土地の性質が良いことは、同じ意味ではありません。
地形、地歴・造成、地盤調査、地盤対策、基礎、建物という順番につなげて見ることが重要です。
木造・鉄骨造・RC造
戸建て住宅では木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造などがあります。「木造だから弱い」「RCだから強い」と構造名だけで判断することはできません。建物の耐震性能には、設計、壁や柱の配置、接合部、基礎、施工状態、築年、維持管理など多くの要素が関係します。
耐震・制震・免震
耐震は、柱、梁、壁など建物そのものの強度によって地震の力に耐える考え方です。制震は、ダンパーなどによって地震による揺れのエネルギーを吸収し、建物の揺れを抑える考え方です。免震は、建物と地盤・基礎の間などに免震装置を設け、地面の揺れを建物へ伝わりにくくする考え方です。「免震だから絶対安全」「制震だから免震より劣る」という順位をつけるものではありません。建物の高さ、形状、設計、地盤条件などによって採用される方法は異なります。
耐震等級も確認する
新築戸建てを比較するときには、耐震等級という指標があります。住宅性能表示制度では耐震等級1、2、3があり、等級3が最も高い水準です。ただし、数字だけではなく、何に基づいてその等級が示されているのかを確認することが大切です。
マンションは「地盤」と「建物」を分けて見る
マンションでは、地表付近の地盤と、建物を支える基礎・支持地盤を分けて考える必要があります。大規模マンションでは、地盤調査を行ったうえで、建物の規模や地盤条件に応じた基礎形式が採用されます。杭基礎が採用される建物では、杭を地下の支持層まで到達させて建物を支える設計があります。一方、地盤条件などによっては直接基礎が採用される建物もあります。「埋立地だからマンションそのものが危険」と住所だけで判断することも、「杭があるから何も心配しなくていい」と考えることも適切ではありません。
これはマンションでも同じです。例えば販売資料に「支持層まで杭を打設」と書かれていても、「杭があるから安心」だけで終わらせません。なぜその深さまで杭が必要なのか。支持層はどこにあるのか。その上にはどのような地層があるのか。なぜこの基礎形式が採用されたのか。反対に、直接基礎だから必ず優れているという意味でもありません。大切なのは工法の名前で優劣を決めることではなく、「この土地、この建物だから、この基礎・工法になっている」という理由を読むことです。耐震、制震、免震についても同じです。名称だけで評価せず、建物の高さや形状、地盤との関係、設計上の考え方まで見ていきます。
マンションの構造
マンションでよく見るのが、RC造、SRC造、S造などです。RC造は鉄筋コンクリート造。SRC造は鉄骨鉄筋コンクリート造。S造は鉄骨造です。「SRCだからRCより必ず地震に強い」という単純な比較はできません。重要なのは構造の名前だけではなく、その建物がどのような設計思想でつくられているかを見ることです。
タワーマンションは「倒れるか」だけを見ない
超高層マンションでは、地震に対して建物が倒壊しないことだけでなく、揺れ方も重要になります。高層建築では、地震によってゆっくりとした大きな揺れが長く続く長周期地震動も考える必要があります。耐震なのか、制震なのか、免震なのか。さらに、エレベーター停止、停電、断水、非常用電源、防災備蓄、避難方法なども重要です。地震発生後に、その建物で生活を継続できるか。ここまで見ておきたいところです。
湾岸では「建物の下」だけでなく「建物の外」も見る
芝浦、月島、勝どき、晴海、豊洲、有明などでは、建物そのものだけでなく、周辺道路、上下水道、電気、液状化、浸水、エレベーター、非常用電源、帰宅困難時の対応も確認したいところです。マンションという「点」だけでなく、街という「面」まで見る。これが湾岸のマンションを地震という観点から見るときのポイントです。
地盤や構造を確認したら、その次に考えたいのが管理と将来価値です。マンションは建物が完成した瞬間がゴールではありません。管理、修繕、修繕積立金、管理費、立地、再開発、将来の需要。これらが長い時間をかけてマンションの価値に影響します。
「地震に強い街ランキング」を、私たちが作らない理由
「東京で地盤が強い場所はどこですか」——1位○○区、2位○○区、3位○○区と並べれば、分かりやすい記事にはなると思います。けれど私たちは、不動産会社としてそのランキングを作りません。理由は単純です。同じ街でも、土地は同じではないからです。
武蔵野台地の上にも谷があります。多摩丘陵にも切土と盛土があります。世田谷区の中にも台地と谷、低地があります。湾岸の埋立地でも、建物によって基礎も構造も地震対策も違います。住所だけで○と×をつけると、実際の不動産を見るうえで大切なものを落としてしまいます。地盤の評価と、不動産の評価は同じではありません。
不動産の資料は、「書いてあること」より一歩先を見る
地盤改良済み。支持層まで杭施工。免震構造。耐震等級3。管理費が安い。修繕積立金が安い。こうした言葉を一つずつ○×で評価するのではなく、「なぜ、そうなっているのか」を見ます。
地盤改良が必要だった理由。杭が必要だった理由。免震を採用した理由。管理費が高い理由、あるいは安い理由。修繕積立金が現在の水準になっている理由。この視点は、戸建てでもマンションでも変わりません。資料に書かれた「結果」だけではなく、その理由まで見る。それが、私たちが不動産を見るときに大切にしていることです。
購入前に、実際に何を確認するか
戸建てなら、地盤調査報告書、地盤改良の記録、確認済証・検査済証、設計図書、住宅性能評価書、耐震診断や改修履歴など。マンションなら、重要事項調査報告書、長期修繕計画、修繕履歴、確認可能な設計関係資料、耐震・制震・免震の方式、管理状況、防災設備など。
すべての物件ですべての資料が揃うとは限りません。だからこそ、「資料があるか」「何が確認できるか」「何が分からないのか」を整理すること自体に意味があります。
地盤を知ったら、街を見る
地盤の次は、その街そのものを。エリアごとの住みやすさ・相場・マンションは、各ガイドにまとめています。
地盤が強い場所ではなく、その不動産がどうできているかを見る
武蔵野台地だから。多摩丘陵だから。世田谷だから。湾岸だから。埋立地だから。それだけで住宅の良し悪しを決めることはできません。
土地の成り立ちを知る。地盤を見る。建物を見る。工法を見る。管理を見る。そして価格を見る。最後に、それらを一つの不動産として考える。地盤について調べることは、その入口なのだと思います。
まだ、物件が決まっていなくても。
エリアも予算も条件も、まだ曖昧。そんな段階からでも構いません。「なんとなく気になる」の一言から、その正体を一緒に確かめます。
▸ その「なんとなく」、私たちにお任せください|内見前のご相談すでに他社で物件を紹介されている方へ
一社だけの言葉で、決めなくていい。すでに他社から紹介されている土地、戸建て、マンションでも構いません。地盤、建物、価格、条件をもう一度整理します。
▸ 一社だけの言葉で、決めなくていい|不動産セカンドオピニオン地盤を調べている段階で、ご相談ください。
「武蔵野台地で戸建てを探したい」「この土地の地形が気になる」「中古戸建てだけれど耐震性をどう見ればいいのか」「湾岸マンションの免震と制震を比較したい」「このマンションは埋立地だけれど、どう考えればいいのか」——そんな段階からで大丈夫です。ポータルで見つけた土地・戸建て・マンションのURLを送っていただくところからでも。
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