
ルナ・アズールとは?|カシオペアに乗った私が考える、青森・日本海側・草津を走る新しい夜行列車
ルナ・アズールとは? カシオペアに乗った私が考える、青森・日本海側・草津を走る新しい夜行列車
不動産会社のブログで、いきなり夜行列車の話です。
きっかけは、Google Search Consoleでした。
弊社のサイトが、 「ルナアズール」 という検索で、かなり表示されていました。
理由は単純です。
弊社が「ルナアズール」という名前の賃貸物件を掲載しているからです。
ところが、実際に検索されている言葉を見てみると、
ルナアズール シャワー
ルナアズール 停車駅
ルナアズール 内装
ルナアズールとは
どう考えても、マンションを探している検索ではありません。
夜行列車を探している。
Googleが、同じ名前の賃貸物件を検索結果に出してしまったようです。
最初は単なる検索の「誤爆」だと思いました。
ところが調べてみると、これが面白い。
そして夜行列車なら、私にも少しだけ話があります。
以前、カシオペアで北海道へ行った
以前、家族で寝台特急「カシオペア」に乗り、 北海道へ行ったことがあります。
列車の中で食事をして、夜を過ごす。
窓の外の景色が少しずつ変わり、 朝になれば北海道に着いている。
飛行機なら数時間で着く場所へ、 わざわざ一晩かけて向かう。
効率だけを考えれば、不思議な乗り物です。
でも、だからこそ覚えています。
目的地だけではなく、そこへ向かう時間そのものが旅だった。
寝台特急「カシオペア」 は1999年、上野―札幌間を結ぶ列車として登場しました。
全室A寝台個室。 食堂車やラウンジカーを備えた、 JR東日本を代表する寝台列車でした。
北海道新幹線の開業に伴い、 上野―札幌間の定期的な運行は2016年に終了。 その後は「カシオペア紀行」などとして走りましたが、 2025年6月に営業運転を終えています。
A NEW NIGHT TRAIN
そして、新しい夜行列車
「ルナ・アズール」
JR東日本が2027年度初の運行開始を予定している新しい特急列車が、 「ルナ・アズール(Luna Azul)」 です。
名前の意味は、スペイン語で 「青い月」。
JR東日本は、 「青色」「上質さ」「包み込まれるような心地よさ」 「日常を離れた体験」を表現する名称として、 ルナ・アズールと名付けています。
そして、新しい車両が格好いい。
深い青を基調にした車体には、 夜のわずかな時間に現れる 「ブルーモーメント」が表現されています。
10両編成の外装に配されたデザインを再構成し、 10本の光線が「青い月」を形づくるロゴになっています。
青は、偶然にも弊社 blue blooded のブランドイメージでもあります。
そして個人的には、長年応援している イタリア・ミラノのサッカークラブ、 インテルの色でもある。
名前と車体を見た時点で、 どうしても気になる列車になりました。
カシオペアは夜空の星。
ルナ・アズールは「青い月」。
カシオペアという名前を聞けば、 北の夜空にあるカシオペヤ座を思い浮かべます。
そして新しい列車の名前は、 青い月。
星から、月へ。
どちらも夜空を思わせる名前です。
ただし、列車としての考え方を見ていくと、 二つは似ているようで少し違います。
カシオペアには、 「北海道へ行く」 という非常に強い目的地がありました。
一方のルナ・アズールは、 目的地だけではなく、 そこへ向かう途中そのものを旅にしようとしている ように見えます。
春から秋、ルナ・アズールはどこを走るのか
導入時に発表されている ルナ・アズールの運行計画 は、季節によって大きく異なります。
まず春季から秋季は、 品川―青森間を結ぶ夜行列車として運転される予定です。
↓
東京
↓
上野
↓
大宮
↓
高崎
↓
上越線
↓
日本海側へ
↓
秋田
↓
弘前
↓
新青森
↓
青森
運行頻度は週2往復。 夜行運転は10両編成、定員125名が予定されています。
下りは品川を21時頃に出発し、翌朝9時30分頃に青森へ到着。 約12時間半の旅です。
一方、上りは青森を16時頃に出発し、翌朝7時頃に品川へ到着。 こちらは約15時間。
公式発表の 「所要時間12.5~15時間程度」 という幅は、上下列車の違いを見ると分かりやすい。
そして、このルートを見て最初に気になったことがあります。
仙台を通らない。
なぜ、仙台を通らず青森へ行くのか
東京から青森へ行くだけなら、 東北新幹線 があります。
東京―新青森を速く移動するなら、 当然こちらの方が合理的です。
ところがルナ・アズールは、 仙台・盛岡方面へ最短で向かわない。
高崎から上越線へ入り、 日本海側へ抜けます。
そこから秋田、弘前を経て青森へ向かう。
つまりこれは、 青森へ最短で行くための列車ではない。
目的地までの「途中」を、
もう一度、旅にする列車。
そう考えると、 この遠回りが急に面白く見えてきます。
このルートには、夜行列車の記憶がある
鉄道に詳しい方なら、 このルートを見て思い出す列車があるかもしれません。
寝台特急 「あけぼの」です。
かつて上野と青森を結んだ「あけぼの」は、 時代によって経路の変遷を経ながら、 晩年には上越線から日本海側へ抜け、 羽越本線を通って秋田、弘前、青森へ向かっていました。
ルナ・アズールは新しい列車ですが、 走る線路を見れば、 かつての夜行列車を思い出す人がいるのも自然です。
昔と同じものをそのまま復活させるのではなく、 夜行列車が走ってきた鉄道網に、新しい旅の価値を与える。
そんな見方もできそうです。
なぜ、札幌ではなく青森なのだろう
カシオペアを経験していると、 どうしても思います。
せっかく夜行列車を走らせるなら、北海道まで行けばいいのに。
でも考えてみると、 青森という終着駅はかなり絶妙です。
北海道まで行けば、 それだけで大きな旅行になります。
往路を一晩かけて楽しんだあと、 帰路まで長時間の鉄道にすると、 旅全体がかなり長くなる。
私自身、北海道まで行くなら、 帰りは飛行機という選択肢が自然に浮かびます。
ところが青森なら違う。
OUTBOUND
行き
品川 → 日本海側 → 秋田 → 弘前 → 青森
RETURN
帰り
新青森 → 盛岡 → 仙台 → 東京
帰りは 東北新幹線 で東京へ戻ることができます。
行きと帰りで、 違うルートを楽しめる。
一筆書きのように、東北を周遊できる。
そう考えると、 青森は「北海道まで行かない終着駅」ではなく、 東北周遊の起点・終点としても面白い場所 に見えてきます。
そして、もう一つ気になる。
なぜ「品川」からなのだろう
ルートを見ていて、 もう一つ気になったことがあります。
始発が品川であることです。
カシオペアは上野から北海道へ向かいました。
「あけぼの」も上野と青森を結んだ夜行列車でした。
ところがルナ・アズールは、 品川から東京、上野、大宮へ と北上していきます。
JR東日本は、 「羽田空港や成田空港からのアクセスを考えて品川始発にした」 と公式に説明しているわけではありません。
ですから、ここからは私なりの見方です。
ただ、インバウンドという視点から見ると、 品川という場所はかなり面白い。
品川は京急線によって、 羽田空港と直接つながっています。
海外から東京へ入り、 東京で何日か過ごす。
そして夜になったら、 品川からルナ・アズールに乗る。
↓
羽田・成田
↓
東京滞在
↓
品川
↓
ルナ・アズール
↓
秋田・弘前・青森
↓
東北新幹線
↓
東京
こうすると、 非常に分かりやすい周遊旅行になります。
特に羽田からなら、 空港と品川の相性はいい。
そして品川を出た列車は、 東京、上野という巨大ターミナルを拾いながら北へ向かう。
上野から北へ向かった昔の夜行列車と、 品川から国内外の旅行者を東北へ連れていく新しい列車。
始発駅の違いにも、 時代の変化が表れているように感じます。
品川という街そのものも、 これから大きく変わっていきます。
リニア中央新幹線 、 広域品川圏 という視点から見ると、 ルナ・アズールが品川から走り始めることも、 また違って見えてきます。
WINTER ROUTE
そして冬、ルナ・アズールは「草津」へ向かう
ここまで青森へ向かう夜行列車として見てきましたが、 ルナ・アズールには、もう一つの顔があります。
冬季は夜行ではありません。
JR東日本の公式発表 では、冬季は 品川―長野原草津口 を結ぶ昼行列車として運転する予定です。
↓
東京
↓
上野
↓
大宮
↓
高崎
↓
渋川
↓
中之条
↓
長野原草津口
こちらは週6往復。
青森への夜行運転が10両・定員125名なのに対して、 冬季の草津方面は 7両編成・定員150名で運転される予定です。
下りは品川を10時頃に出発し、 長野原草津口へ12時30分頃に到着。
上りは長野原草津口を16時30分頃に出発し、 品川へ19時30分頃に到着する計画です。
所要時間は約2時間半から3時間。
春から秋は、 一晩かけて日本海側から東北へ。
冬になれば、 東京から群馬の温泉地へ。
「夜行列車」だけではなく、
季節そのものを旅に変える列車なのかもしれません。
そして草津という目的地も、 インバウンドとの相性を考えると興味深いところです。
東京から鉄道で向かえる日本の温泉地。
雪の季節に、 青い列車で草津方面へ向かう。
春から秋の東北周遊とはまったく違う旅行商品を、 同じ車両でつくることができます。
日本海側を、もう一度「旅」にする
東北旅行というと、 東京から東北新幹線で仙台、盛岡、新青森へ向かうルートを まず思い浮かべます。
速くて便利です。
一方で、 高速化すればするほど、 途中にある地域は「通過する場所」になっていきます。
ルナ・アズールは、 それを逆にしているように見えます。
時間をかける。
夜を過ごす。
そして、日本海側を通る。
秋田へ。
弘前へ。
青森へ。
新幹線の最短ルートでは通らない場所を、 あえて一本の旅につなげる。
速くするのではなく、遠回りすることで価値をつくる。
これがルナ・アズールの面白さなのかもしれません。
鉄道のルートを追っていると、 街と街を結んでいるのは線路だけではなく、 山や川、海、台地といった地形であることにも気づきます。
東京についても、 武蔵野台地と多摩丘陵 を見ていくと、 鉄道や住宅地が現在の場所にある理由が少しずつ見えてきます。
もしかすると、日本人だけを見ていない
そして、この列車を調べていて、 もう一つ重要なことに気づきました。
JR東日本はルナ・アズールについて、 鉄道の旅ならではの体験を 国内外の多くの利用者 に楽しんでもらうことを目指しています。
そう考えてから、 もう一度ルートを見る。
↓
Night Train
↓
Akita
↓
Hirosaki
↓
Aomori
↓
Shinkansen
↓
Tokyo
これだけで、 一つの日本旅行になります。
東京、京都、大阪、富士山。
そうした定番の訪日ルートとは、 かなり違う日本です。
日本海。
雪。
温泉。
食。
地方都市。
秋田。
弘前。
青森。
そして、夜行列車。
さらに冬になれば、 草津温泉方面へ向かう昼行列車になる。
海外から来た旅行者にとっては、 移動そのものが日本を体験する観光商品 になり得ます。
「なぜ日本海側なのか」
「なぜ青森なのか」
「なぜ品川なのか」
そして「なぜ冬は草津なのか」。
それぞれを単独で見ると分かりません。
しかし、 東北周遊・温泉・季節・インバウンド という視点から一本につなげてみると、 ルナ・アズールが単なる「新しい夜行列車」ではないことが見えてきます。
ルナ・アズールの車内はどうなる?
ルナ・アズールは、 E657系特急形車両を改造してつくられます。
夜行運転では、 全室がプレミアムグリーン個室またはグリーン個室。
1人用から4人用まで用意され、 夜には横になれるフラット面をつくる設計です。
5号車には、 共用スペース 「ルナ・ヴィスタ・ラウンジ」 も設けられます。
昔の寝台列車をそのまま復活させるのではありません。
現代の特急車両を使って、 「夜を過ごすための新しい個室列車」 をつくろうとしている。
ここもカシオペアとの大きな違いです。
車両・個室・ラウンジのイメージは、 JR東日本「ルナ・アズール」公式ページ で見ることができます。
ルナ・アズールの料金はいくら?
これも、すでにGoogleで検索されている言葉です。
具体的な料金は、 まだ正式発表されていません。
ただしJR東日本は、 一つの目安を公表しています。
大人1名が品川―青森間でグリーン個室を利用した場合、 「東北新幹線グリーン車+α程度」 を想定しています。
JR東日本が参考として示している 東京―新青森間の「はやぶさ」グリーン車は、 通常期で大人片道24,180円。
したがって、 ルナ・アズールが極端に高額な豪華クルーズ列車とは、 少し違う価格帯を狙っている可能性もあります。
ただし最終的な料金は未発表です。
販売は旅行商品として予定されており、 具体的な料金や販売方法については、 今後の正式発表を待つ必要があります。
ルナ・アズールにシャワーはある?
これも実際に検索されている言葉です。
ただし、 現時点で公表されている情報だけでは、 シャワー設備の有無を断定できません。
一晩を過ごす列車だけに、 今後かなり注目されるポイントになりそうです。
最新の車内設備については、 JR東日本のルナ・アズール公式ページ で確認できます。
カシオペアとルナ・アズール
| カシオペア | ルナ・アズール | |
|---|---|---|
| 登場 | 1999年 | 2027年度初予定 |
| 起点 | 上野 | 品川 |
| 主な目的地 | 札幌 | 春~秋:青森 冬:長野原草津口 |
| 客室 | A寝台個室 | プレミアムグリーン個室・グリーン個室 |
| 共用空間 | 食堂車・ラウンジカー | ルナ・ヴィスタ・ラウンジ |
| 旅の特徴 | 北海道を目指す寝台の旅 | 東北夜行と冬の草津方面 |
カシオペアは、 北海道という強烈な目的地を目指す列車 だったと思います。
ルナ・アズールは、 少し違う。
途中にある場所を、もう一度目的地にする。
そして季節が変われば、 列車そのものの役割まで変える。
その違いに、 夜行列車を取り巻く時代の変化が表れているのかもしれません。
速いことだけが、豊かさではない
新幹線なら数時間。
飛行機なら、さらに速い。
それなのに、 12時間以上かけて青森へ行く列車を新しくつくる。
一見すると、 時代に逆行しているようにも見えます。
でも今は、 速さそのものが珍しい時代ではありません。
だから逆に、
時間を使うこと自体が、贅沢になった。
カシオペアに乗ったとき、 北海道だけを覚えているわけではありません。
車内で食事をしたこと。
夜の列車で家族と過ごしたこと。
窓の外を眺めたこと。
そして朝になって、 北海道へ着いたこと。
札幌の雪景色も、 洞爺湖の景色も、 その前に一晩の列車の旅があったからこそ、 一つの記憶としてつながっています。
ルナ・アズールも、 そんな列車になるのかもしれません。
RELATED STORIES
鉄道から、街と日本を読む
ルナ・アズールを調べていると、 夜行列車だけではなく、 鉄道が街をどう変えてきたのか、 そしてこれから日本の都市がどう変わっていくのかにもつながっていきます。
鉄道、都市、歴史、地形。 少し違う角度から書いた記事もあります。
夜行列車から始まった話も、
鉄道史、品川、リニア、東京の地形へとつながっていきます。
街は、鉄道だけでも、地形だけでもできていない。
そして、なぜ不動産会社がこの話を書いているのか
話を最初に戻します。
今回、 私がルナ・アズールについて調べることになった理由は、 鉄道ニュースを追いかけていたからではありません。
Google Search Consoleです。
弊社には、 「ルナアズール」という名前の賃貸物件があります。
そのためGoogleが、 新しい列車「ルナ・アズール」を探している人に、 弊社の不動産ページまで表示したようです。
検索する人が求めていたのは、 おそらく列車。
表示されたのは、不動産。
完全な寄り道です。
でも、その寄り道から調べてみたら、 カシオペアで北海道へ行った記憶につながり、 日本海側につながり、 東北につながり、 草津につながり、 品川につながり、 インバウンドの話にまでつながりました。
物件を探していたら、夜行列車へ。
夜行列車を調べていたら、不動産へ。
今回はGoogleがつくった、 少し不思議な乗り換えでした。
blue blooded
不動産は、物件から始めない。
街を知ること。
土地を知ること。
人がどうやって、その街へやって来るのかを知ること。
一見、不動産とは関係がないように見える話にも、
街を見るヒントが隠れていることがあります。
先に、お話を。
鉄道・公式情報
※ルナ・アズールの具体的な運転日、最終的なダイヤ、料金、 車内サービス等は今後変更・追加される可能性があります。 最新情報はJR東日本の公式発表をご確認ください。