
築50年でも売れるタワマン、売れなくなるタワマン|価値の寿命を考える
第3回 築50年でも売れるタワマン、売れなくなるタワマン。
第2回 修繕積立金が高いマンションは、本当に損なのか
第3回 管理費が高いタワーマンションは、将来売れなくなるのか
第4回 築30年・40年でも売れるマンション、売れなくなるマンション
第5回 30年後も価値が残るタワーマンションは?
第2回 築50年のタワーマンションは、何にお金がかかるのか。
▶ 第3回 築50年でも売れるタワマン、売れなくなるタワマン。(この記事)
第4回 タワマンは100年後、「ヴィンテージ」になれるのか。
30年後までのマンション選びは、「30年後も価値が残るタワーマンションは?」で、都心・湾岸の実在マンションを例に整理しました。ここからは、そのさらに先を考えます。
築50年でも建物は使える。
補修技術もある。
設備も交換できる。
それでも、すべてのマンションが残るとは思いません。
なぜか。
直す価値がなくなるマンションが出てくるからです。
同じ築50年でも、価値が2億円の住戸と500万円の住戸では、500万円の設備更新負担の意味は全く違います。
2億円なら資産価値の2.5%。
500万円なら資産価値と同額です。
ここで初めて、建物の物理的寿命と経済的寿命が分かれます。
まず残るのは、立地
建物は古くなります。
しかし場所は古くなりません。
駅。
都心へのアクセス。
雇用。
商業。
教育。
医療。
公園。
眺望。
再開発。
街の需要。
土地の希少性。
こうしたものが残れば、古い建物にもお金を掛ける理由が残ります。
都心部の価値は将来上がるのか
50年後の地価を断定することはできません。
ただ、東京都心の希少な土地が将来大量供給される可能性は高くありません。
交通、雇用、行政、文化、商業、教育など都市機能が集中する場所では、長期的に需要が残る蓋然性は高いと考えます。
特に日本やシンガポールのように、可住地が限られ、高密度な都市が形成されている国の都心では、建物が古くなっても土地・立地が資産価値を支える力は大きい。
一方で、ニューヨークやパリ、ロンドンの歴史的建築では、土地価値だけでなく建築そのものに歴史的・文化的価値が積み上がることがあります。
ただし国単位で単純に分けることはできません。
マンハッタンも土地は極端に希少です。
結局、土地が残す価値と、建物が積み上げる価値の両方を見る必要があります。
三田綱町パークマンションが示すもの
三田綱町パークマンションは1971年竣工。
SRC造。
築55年です。
現在も高額な売出事例があります。
重要なのは「築55年なのに高い」ということだけではありません。
三田という都心立地。
特徴的な建築。
ゆとりある住戸。
大きな住戸面積。
建物の規模感。
こうした新築では簡単に再現できない要素がある。
古さがそのまま価値の低下にならない理由は、そこにあります。
管理が価格へ出る時代になる
新築時には、どのマンションもきれいです。
築50年になると、50年間の管理の差が建物に出ます。
必要な工事をしてきたか。
積立金を準備してきたか。
管理組合が機能しているか。
設備更新を先送りしていないか。
共用部が荒れていないか。
こうした履歴が市場価値に出てきます。
建物が使えても、市場で選ばれるとは限らない。
築年数が進んだときに差が出るのは、立地、土地、管理、修繕履歴、所有者負担、そして売買市場での需要です。30・40年時点の中古市場は別記事で整理しています。
→ 築30年・40年でも売れるマンション、売れなくなるマンション規模は弱点にも強みにもなる
タワーマンションは設備が多い。
その分、修繕費も大きい。
これは弱点です。
一方で戸数が多ければ、費用を多くの所有者で分担できる。
これは強みです。
500戸、1,000戸という規模そのものに善悪があるわけではありません。
重要なのは、大きな建物を維持するための管理能力と資金力があるかです。
「修繕する価値」が残っているか
例えば築50年で一戸2億円。
その資産を維持するために、一戸あたり数百万円の大規模修繕負担が必要になる。
高額ではあります。
でも数億円の資産を守るためなら、経済合理性があります。
一方、一戸500万円のマンションで500万円の追加負担を求められたらどうでしょう。
同じ工事でも、所有者の判断は全く違います。
だから本当に怖いのは、建物の物理的老朽化より、「お金をかけて守りたい」という理由がなくなること。
これが価値の寿命です。
所有者が一つの方向を向けるか
マンションは数百人で一つの建物を所有しています。
50年間あれば相続も起こります。
所有者が海外へ移る。
高齢化する。
相続人が複数になる。
権利関係が複雑になる。
所在が分かりにくい所有者が出る。
管理費や修繕積立金の滞納が出る。
ただし、通常の修繕と建替え・敷地売却では意思決定の重さが違います。
本当に難しくなるのは、建物全体の大きな再生や最終処分を考える局面です。
つまり「払えるか」だけではなく「決められるか」。
これも50年後の価値を左右します。
実際に考えてみる|築50年の先で、「残す」「建替える」は誰が決めるのか。
ここまで考えると、築50年のマンションの価値は、修繕だけでは決まりません。
修繕を続けるのか。
建物を更新するのか。
建替えるのか。
敷地ごと売却するのか。
最後は、建築技術だけではなく、所有者がその建物の未来を決められるかという問題になります。
改正区分所有法は2026年4月1日に施行されました。建替え決議は原則として区分所有者数・議決権の各5分の4以上ですが、耐震性不足、火災安全性不足、外壁剥落のおそれ、配管設備の著しい劣化など、法律上の客観的な緩和事由がある場合は各4分の3以上へ緩和されます。
さらに、従来の「建替え」だけでなく、建物更新、再建、建物敷地売却、取壊しなど、複数の再生・退出ルートが制度として整備されました。
1,000戸のタワーマンションで、本当に難しいのは「建てること」だけではない
東京ツインパークスは約1,000戸。
芝浦アイランド ケープタワーは1,000戸を超えます。
センチュリーパークタワーも700戸を超える大規模マンションです。
築50年、70年になれば、相続、共有、法人所有、海外居住、所在確認、高齢化など、権利関係は現在より複雑になっている可能性があります。
そこで問題になるのは、
建替え費用を負担できるか。
容積率や高さの条件をクリアできるか。
そして、必要な合意を集められるか。
「建てられるのに、決められない。」
大規模タワーマンションでは、これが将来の大きなリスクになる可能性があります。
容積率を増やせば解決する、とは限らない
昔の団地や低層マンションには、敷地に余裕があり、建替えによって住戸数を増やし、新しく生まれた住戸を販売することで建替え費用を補えた事例があります。
しかし、2000年代以降の都心タワーマンションは、開発時点で容積率や敷地条件をかなり使っているものも多い。将来も「余った容積率で数百戸増やせる」と考えるのは危険です。
一方、制度は固定ではありません。現在でも、一定の要件を満たすマンションの再生について、特定行政庁の許可による容積率や高さ制限の緩和制度があります。
国の基本方針でも、マンションの建替え・更新・再建を円滑にするため、必要に応じて総合設計制度や地区計画などを活用し、容積率・高さ制限への対応を図る方向が示されています。
では、容積率を増やせないならどうするのか
一つの考え方が、建替え後の住戸を少し小さくすることです。
例えば、単純化して考えます。
現在 70㎡ × 1,000戸
↓ 建替え後、従前所有者が平均55㎡を再取得すると仮定
15㎡ × 1,000戸 = 15,000㎡の差
この15,000㎡を新規販売住戸へ振り替えられるなら、50㎡住戸に単純換算して300戸分です。
もちろん現実の建替えは、共用廊下、エレベーター、設備、容積算定、住戸位置、従前資産評価、権利変換などが絡むため、この計算どおりにはなりません。
ただ、「延床面積を増やさなければ戸数を増やせない」わけではないという点は重要です。
70㎡を55㎡にする。それでも所有者が納得することはあるのか
面積だけを見れば、普通は不利です。
しかし、築70年の70㎡から、新築の55㎡へ移る場合はどうでしょう。
耐震。
断熱。
防災。
給排水。
エレベーター。
バリアフリー。
管理。
そして残存年数。
面積は小さくなっても、資産価値や使い勝手が上がるなら、一定の所有者にとって合理的な選択になる可能性があります。
一方で、同じ70㎡を欲しい所有者は追加負担をする。
小さい住戸へ移る所有者もいる。
再取得せず、金銭を受け取って退出する所有者もいる。
将来の大規模マンション再生では、全員が同じ条件で同じ広さの部屋に戻るという考え方より、複数の選択肢を組み合わせる方が現実的になるかもしれません。
将来、合意要件はさらに変わるのか
これは断定できません。
ただ、2026年の法改正が示している方向は明確です。高経年マンションの再生について、従来よりも意思決定を進めやすくし、建替え以外の出口も増やす方向へ制度は動いています。
数百戸、1,000戸規模のタワーマンションが築50年、70年へ入る2050年代以降、現在とまったく同じ仕組みが維持されていると決めつけることもできません。
ただし、法律が変われば価値が残る、でもありません。
制度が整っても、土地に価値がない。建替え費が重い。買い手がいない。所有者が再取得を望まない。そうなれば再生は難しい。
だから将来価値は、建物・土地・管理・資金・市場・法律を一緒に見る必要があります。
3棟を見ると、将来の「出口」の意味も違ってくる
| 物件 | 50年後に見ること | その先の論点 |
|---|---|---|
| センチュリーパークタワー | 都心立地と大規模管理を維持できるか | 佃・リバーシティの街として残す価値 |
| 東京ツインパークス | 汐留・浜離宮という立地価値と更新力 | 約1,000戸の合意形成と土地利用 |
| 芝浦アイランド ケープタワー | 芝浦・田町の需要と島全体の成熟 | 1,000戸超の所有者と街区再生の可能性 |
この3棟について、いま「将来は建替えられる」「建替えられない」と断定することはできません。
ただし、将来も売れるかを考えるなら、現在の価格や眺望だけではなく、50年後に修繕を続ける価値があるか。さらにその先で、建物の未来を決められるだけの土地・資金・制度・合意形成力が残るか。
そこまでが、長期で見る「マンションの価値」だと考えます。
売れなくなるマンションとは
築50年だからではありません。
でも、修繕が遅れる。
設備が古い。
管理組合が動かない。
積立金が不足する。
街の需要が落ちる。
賃料が下がる。
融資する側も慎重になる。
すると買い手が、この先にお金をかける理由がない、と判断し始める。
ここで市場価値が苦しくなります。
50年後にも選ばれる理由があるか
眺望は大事。
新しさも大事。
豪華な共用部も大事。
でも、その魅力が20年、30年、50年後にも意味を持つのか。
そこまで考える。
50年後にも建っているマンションと、50年後にも選ばれるマンションは違う。
ここが購入時に考えたいところです。
建物の寿命と、価値の寿命は同じではありません。
長く使えることと、長く選ばれること。その二つが重なるマンションを探す。50年後を考えることは、いまの購入判断を厳しくするためではなく、見るべき順番を整えるためです。
出典・参考資料
本連載は、制度・建築年・構造・修繕費等について、可能な限り公的機関・事業者の一次資料を優先して確認しています。売出価格は成約価格ではなく、掲載時点の公開売出情報です。
国土交通省|マンション管理・再生ポータル「大規模修繕工事の工事費の目安」
三井不動産|沿革(三田綱町パークマンション・1971年竣工/国内初の高層マンション)
三井のリハウス|三田綱町パークマンション公開売出情報(価格・管理費・修繕積立金・構造)
Singapore URA|Former Golden Mile Complex(1973年完成・保存建築)
Singapore URA|Conservation Technical Handbook(RC構造・Golden Mile Complex掲載)
NYC Landmarks Preservation Commission|The San Remo
NYC Landmarks Preservation Commission|The Century(1931年建築)
国土交通省|マンションの再生等について(2026年4月施行制度)