
タワマンは100年後ヴィンテージになれる?三田綱町・海外事例から考える
第4回 タワマンは100年後、「ヴィンテージ」になれるのか。
第2回 修繕積立金が高いマンションは、本当に損なのか
第3回 管理費が高いタワーマンションは、将来売れなくなるのか
第4回 築30年・40年でも売れるマンション、売れなくなるマンション
第5回 30年後も価値が残るタワーマンションは?
第2回 築50年のタワーマンションは、何にお金がかかるのか。
第3回 築50年でも売れるタワマン、売れなくなるタワマン。
▶ 第4回 タワマンは100年後、「ヴィンテージ」になれるのか。(この記事)
30年後までのマンション選びは、「30年後も価値が残るタワーマンションは?」で、都心・湾岸の実在マンションを例に整理しました。ここからは、そのさらに先を考えます。
築100年。
普通に考えれば、ものすごく古い建物です。
でもニューヨークには、築90年を超えてなお評価される高層住宅があります。
The San Remo。
The Century。
The Majestic。
いずれも1930年代初頭に建てられた高層住宅です。
構造は当時のニューヨーク高層建築に多い鉄骨フレームを主体とする方式。
鉄骨架構で建物を支え、その外側にレンガ、石材、テラコッタなどを組み合わせた外装を設けています。
築90年を超えてなお住宅として使われている。
これは「鉄骨が永久にもつ」からではありません。
防水する。
外装を直す。
腐食を防ぐ。
設備を交換する。
内装を更新する。
そうやって使い続けてきた結果です。
シンガポールのGolden Mile Complex
Golden Mile Complexは1973年完成。
RC造を主体とした大型複合建築です。
住宅、商業、オフィスなどを一体化し、段状の構成を持つ特徴的な建築です。
50年以上経った現在、シンガポール政府はこの建物を保存対象として扱っています。
つまり、古い高層建築を壊す対象ではなく、都市の歴史として残す対象と評価した。
ここが重要です。
古いから価値があるわけではありません。
その建物にしかないものがあるからです。
日本では三田綱町パークマンション
三田綱町パークマンションは1971年完成。
SRC造。
地上19階。
三井不動産が国内初の高層マンションと位置づける建築です。
三田綱町という都心立地。
ゆとりある住戸。
建物全体の規模感。
現在では簡単に再現しにくい空間。
築55年になっても、高額な売出事例があります。
ここでも「古いのに高い」というより、新築では代替しにくいものを持っているから価値が残る、と考える方が自然です。
古くなれば、ヴィンテージになるわけではない
築50年になればヴィンテージ。
築70年ならさらに価値が上がる。
そんな話ではありません。
大半の建物にとって築年数は、設備更新や維持費が増える要因になります。
それでも一部の建物では、古さそのものが歴史に変わります。
土地が残す価値
日本やシンガポールの都心では、土地の希少性が非常に強い。
利用可能な土地が限られ、高密度に都市が形成されているため、建物が古くなっても土地・立地の価値が資産価値を支えることがあります。
特に東京の都心部では、駅、雇用、商業、医療、教育、文化、再開発などが集中します。
50年後の地価を断定することはできません。
ただ、都心の希少な土地が将来突然大量供給されるとは考えにくい。
だから、建物が古くなっても立地価値が残る可能性は高い。
「古い」が価値になるには、理由がいる。
立地だけでも、建築だけでも足りません。街、規模感、作り込み、管理、そして時間。その組み合わせが、単なる築古とヴィンテージの差をつくります。
→ 三田の不動産・マンション完全ガイド建物が積み上げる価値
一方、ニューヨークやパリ、ロンドンなどの歴史的建築では、土地価値に加えて建物そのものが文化的・建築的価値を持つことがあります。
ただし、アメリカやフランスは土地が広いから建物価値、日本は土地が狭いから土地価値、と国単位で単純に分けることはできません。
マンハッタンは土地が極端に希少です。
パリ中心部も同じです。
結局、長寿命マンションの価値は、土地が残す価値と、建物が積み上げる価値の両方から考える必要があります。
「壊す」ではなく「変える」という方法もある
欧州では、古い高層住宅を解体せず、既存構造を残しながら大規模改修する事例があります。
古い建物を、その時代の生活に合わせて変える。
バルコニーを増やす。
外装を改善する。
設備を更新する。
住戸を改修する。
これも長寿命化です。
築70年になった建物を、竣工時の姿のまま保存する必要はありません。
使いながら変えていく。
将来のタワーマンションでも、そういう再生が普通になる可能性があります。
ヴィンテージになるために必要なもの
少なくとも次の要素が重なる必要があると思います。
立地が失われないこと。
土地に希少性があること。
建築そのものに魅力があること。
規模感があること。
管理が良いこと。
必要な修繕が行われること。
設備を時代に合わせて更新できること。
住みたい人がいること。
所有者が、その建物の未来を決め続けられること。
そして、新しいマンションでは代替できない何かがあること。
豪華な共用部も、時間に耐えるものと耐えないものがある
新築時には魅力的だった共用施設も、50年後には評価が変わる可能性があります。
一方、石材、天井高、大きなエントランス、庭、十分な敷地、建物全体のプロポーション。
こうしたものは、古さがむしろ味になることがあります。
流行している設備と、建築として残るものは違う。
現在マンションを見るときにも、この視点は使えます。
実際に考えてみる|3棟は100年後、どうなっているのか。
ここまでの話を、現在の東京にある3棟へ戻して考えてみます。
センチュリーパークタワー。
東京ツインパークス。
芝浦アイランド ケープタワー。
この3棟を選んだのは、「100年残る」と予想しているからではありません。立地、街区、規模、建築、管理、更新、土地、そして将来の再生という論点が、それぞれ違う形で見えるからです。
築50年、70年、100年の時点で、①建物を使い続ける価値、②設備を更新する経済合理性、③土地・街の需要、④所有者が意思決定できるか、⑤建替え・更新・売却を含めた出口が残っているか。この5つを考えます。
1|センチュリーパークタワー
1999年3月竣工。
地上54階・地下3階。
総戸数756戸。
敷地面積9,438.22㎡、延床面積118,641.98㎡。
三井不動産の竣工時資料によれば、リバーシティ21地区に建てられた当時の都内最高層の分譲マンションでした。2000年度には、分譲マンションとして初めてグッドデザイン賞を受賞した物件の一つでもあります。
築70年|2069年
築100年|2099年
強いのは、建物だけではなく「佃・リバーシティ」という場所
センチュリーパークタワーを100年で考えるとき、最初に見るべきは54階建という高さではないと思います。隅田川沿いの大規模住宅地として形成されたリバーシティ21の中核にあり、月島・八丁堀・東京駅方面への都市アクセスを持つことです。
建物が古くなっても、この場所に住みたい人がいるなら、修繕・設備更新にお金を掛ける理由が残ります。
建築として残る理由もある
単に「昔のタワマン」ではなく、1990年代を代表する超高層住宅の一つとして認識される可能性があります。竣工時から50㎡台から170㎡台まで幅広い住戸を持ち、建物そのものにも時代性があります。
100年後にヴィンテージになるとすれば、価格が高かったからではなく、東京の高層住宅史の中で意味を持つ建物になれるかが重要です。
ただし、100年残すことが最適とは限らない
築70年、100年まで進めば、構造体だけではなく、給排水、電気、防災、エレベーター、外装、共用設備を何度も更新することになります。
その時点で「直して残す価値」と「建物を更新・建替えする価値」を比較する必要が出てきます。土地価値が強いほど、逆に建替えや再開発という選択肢も経済的に強くなる。これはヴィンテージ候補の面白い矛盾です。
2|東京ツインパークス
2002年10月竣工。
地上47階のツインタワー。
総戸数1,000戸。
敷地面積は約15,500㎡。
三菱地所レジデンスの資料では、旧汐留貨物駅跡地から浜松町駅に至る約31haの汐留土地区画整理事業の中で開発された超高層住宅です。
築70年|2072年
築100年|2102年
最大の資産は、汐留・浜離宮という代替しにくい位置
100年後を考えると、東京ツインパークスの強さは分かりやすい。浜離宮、新橋、汐留、浜松町という都市機能の間にあり、同じ条件の土地を新たにつくることは難しい。
建物が古くなっても、土地・立地そのものが「ここに建物を維持する理由」を支える可能性があります。
一方で、1,000戸という規模が最後に効いてくる
大規模であることは、日常の管理や更新費用を多くの所有者で分担できる強みです。しかし、建替えや大規模な建物更新という局面では、1,000戸の権利関係そのものが大きな論点になります。
50年、70年の間には相続も起きます。共有、法人所有、海外居住などが増える可能性もあります。将来の東京ツインパークスにとって、設備を交換できるかだけではなく、1,000戸が建物の未来を決められるかが価値を左右します。
残す価値と、建替える価値が競合する可能性
立地が非常に強いマンションほど、古い建物を残す価値だけでなく、その土地を次の時代に使い直す価値も大きくなります。
2102年に現在の建物がそのまま残っていることだけが成功ではありません。大規模改修で残るのか。建物更新をするのか。建替えるのか。土地利用を組み替えるのか。その時代に最も価値を残せる選択ができること自体が、長期資産価値の一部だと思います。
3|芝浦アイランド ケープタワー
2006年12月竣工。
地上48階・地下1階。
総戸数1,095戸。
敷地面積16,908.83㎡。
三井不動産の資料では、芝浦アイランド南地区の分譲住宅として開発されました。三方を運河に囲まれた立地と、トライスター形状が大きな特徴です。
築70年|2076年
築100年|2106年
ケープタワーは、一棟だけで考えない方がいい
芝浦アイランドは、住宅だけを建てた開発ではありません。約4,000戸の住宅を中心に、生活利便施設、公益施設、公園、遊歩道などを組み合わせて整備された街区です。
そのためケープタワーの100年後は、「ケープタワーという建物が古くなるか」だけではなく、芝浦アイランドという街が100年使われ続けるかで考える必要があります。
建築上の個性は残りやすい
三方を運河に囲まれた敷地、三方向へ翼を伸ばすトライスター形状、約3,400㎡のプライベートガーデン。こうしたものは、後から設備を豪華にするだけでは簡単に再現できません。
設備は古くなります。しかし、敷地条件や建物配置、街区との関係は、その建物固有のものとして残ります。ヴィンテージ化を考えるとき、これはかなり重要です。
最大の課題も、やはり規模
1,095戸あれば、更新費用を分担する母数は大きい。一方、70年後に大規模な再生を決めるなら、1,095戸の合意形成は簡単ではありません。
さらにケープタワーは、芝浦アイランドという街区の一部です。将来、一棟だけを建替えるのか。周辺建物や公共空間との関係まで含めて再生するのか。現在の私たちには答えを出せません。
ただ、単独のマンションではなく街として成立していることは、100年という時間を考えるうえで弱点だけではなく、再生の選択肢を考える土台にもなり得ます。
3棟を並べると、「100年残る」の意味が違って見える
| 見る条件 | センチュリーパークタワー | 東京ツインパークス | ケープタワー |
|---|---|---|---|
| 竣工 | 1999年 | 2002年 | 2006年 |
| 100年時点 | 2099年 | 2102年 | 2106年 |
| 戸数 | 756戸 | 1,000戸 | 1,095戸 |
| 代替しにくいもの | 佃・リバーシティ/高層住宅史 | 汐留・浜離宮という立地 | 運河・街区・トライスター形状 |
| 長期の強み | 立地+建築的履歴 | 土地・立地の希少性 | 街としての継続性 |
| 長期の課題 | 設備更新と再生判断 | 1,000戸の合意形成 | 1,095戸+街区再生 |
| 100年後の論点 | 残す価値と建替え価値 | 建物と土地、どちらを残すか | 一棟か、街として再生するか |
ここで、どれが一番優れていると順位を付けるつもりはありません。
むしろ3棟を見ると、ヴィンテージのなり方は一つではないことが分かります。
センチュリーパークタワーは、建築と街の歴史を積み上げられるか。
東京ツインパークスは、代替困難な土地に建つ建物を、次の時代へどう渡すか。
ケープタワーは、一棟ではなく芝浦アイランドという街と一緒に成熟できるか。
そして最後に残るのが、法律と合意形成です。
100年残したいと思っても、所有者が建物の未来を決められなければ残せません。
2026年4月にはマンション再生に関する制度が改められ、建物更新、再建、建物敷地売却、取壊しなど、建替え以外も含めた再生・退出の仕組みが拡充されました。
100年後の法律を予想することはできません。ただ、数百戸、1,000戸を超えるマンションが築50年、70年へ進む以上、建物の寿命だけではなく「どう決めるか」という制度も、資産価値の一部になると考えます。
100年後まで、今の建物がそのまま残ることだけが成功ではありません。
修繕して残す。
大規模に更新して残す。
建替えて、次の100年へ渡す。
土地として、次の街へつなぐ。
その時代に、最も価値を残せる選択ができること。
それもまた、100年後まで価値が残るマンションの条件なのだと思います。
100年後に残るタワマンは、きっと少数です
私は、100年後にも残っている現在のタワーマンションはあると思います。
でも全部ではありません。
100年残る建物は、丈夫だったからだけではなく、100年間、誰かが残したいと思い続けた建物なのではないでしょうか。
修繕する。
設備を更新する。
管理する。
買う。
売る。
住む。
貸す。
その行動が100年間続いた結果として、建物が残る。
新築マンションを選ぶときにも、100年後を考えてみる
100年後の価格を予想する必要はありません。
でも、この立地は50年後も必要とされるか。
この建物は古くなっても格好いいか。
共用部は流行だけでできていないか。
管理しやすいか。
設備を交換できる設計か。
修繕にお金をかける価値が残るか。
そんな視点で見ると、新築マンションの見え方も少し変わります。
古さが、価値になる建物を選ぶ
築年数を止めることはできません。
だから、古くならないマンションを探すことはできない。
できるのは、古くなっても選ばれるマンションを探すことだと思います。
それが私たちが考える、長く価値の残るマンションです。
100年後に残るのは、すべてのタワーマンションではないと思います。
だからこそ、築年数ではなく「時間を味方につけられる建物か」を見る。立地 × 規模感 × 作り込み × 管理 × 街 × 時間。長く所有するほど、この視点は大切になります。
出典・参考資料
本連載は、制度・建築年・構造・修繕費等について、可能な限り公的機関・事業者の一次資料を優先して確認しています。売出価格は成約価格ではなく、掲載時点の公開売出情報です。
国土交通省|マンション管理・再生ポータル「大規模修繕工事の工事費の目安」
三井不動産|沿革(三田綱町パークマンション・1971年竣工/国内初の高層マンション)
三井のリハウス|三田綱町パークマンション公開売出情報(価格・管理費・修繕積立金・構造)
Singapore URA|Former Golden Mile Complex(1973年完成・保存建築)
Singapore URA|Conservation Technical Handbook(RC構造・Golden Mile Complex掲載)
NYC Landmarks Preservation Commission|The San Remo
NYC Landmarks Preservation Commission|The Century(1931年建築)
三井不動産|センチュリーパークタワー竣工資料(756戸・敷地面積・延床面積・構造)
三井不動産|センチュリーパークタワー 2000年度グッドデザイン賞
三菱地所レジデンス|東京ツインパークス・汐留土地区画整理事業
三井不動産|芝浦アイランド地区プロジェクト概要(ケープタワー1,095戸・敷地面積等)
では、いま検討している一件はどうか。
立地、管理、修繕、規模、街、そして将来の選択肢。
ここまでの記事で見てきた視点を、
お客様が検討しているマンションに当てはめて見ていきます。
物件名やURLだけでも構いません。
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