
関東ローム層は地震に弱い?|赤土の正体・分布地域・N値・地耐力から東京の地盤を徹底解説
GEOLOGY / KANTO LOAM
関東ローム層は地震に弱い?
赤土の正体・分布地域・N値・地耐力から東京の地盤を徹底解説
東京の地盤を調べると、必ず出てくる「関東ローム層」。
武蔵野台地を覆う赤土として知られていますが、地震に強いのでしょうか。それとも弱いのでしょうか。
実は、この土には一見すると矛盾する性質があります。
地盤の硬さを表す指標の一つであるN値は低い。それなのに、住宅を支える地盤として利用されることがある。
さらに、自然状態では比較的安定していても、土の構造が乱されたり、地下水や造成の条件が変わったりすると、強度が大きく低下する場合があります。
この違いを理解しなければ、関東ローム層の地盤を正しく評価することはできません。
1.結論|関東ローム層は強いのか、弱いのか
先に結論を整理します。
関東ローム層は、硬い岩盤や締まった砂礫層と同じ意味で「強い地盤」ではありません。
しかし、自然状態で長期間形成された土の構造によって、N値の低さから想像する以上の強度を持つことがあります。
そのため、条件が良ければ住宅などの低層建物を支える地盤として利用できます。
一方、再堆積した土、人工的な盛土、地下水の影響を強く受ける場所、斜面などでは、慎重な調査が必要です。
関東ローム層の評価が難しいのは、「弱い性質」と「強さを保つ仕組み」が同時に存在するためです。
地盤の専門家が関東ローム層を一律に軟弱地盤と扱わないのは、自然状態の強度を無視できないからです。
反対に、関東ローム層を安心な地盤と決めつけないのは、その強度が地盤の状態に左右されるからです。
関東ローム層は、条件によって評価が大きく変わる土なのです。
2.関東ローム層とは何か|火山灰から生まれた赤土
関東ローム層は、関東地方の台地や丘陵地に広く分布する火山灰質の地層です。
富士山、箱根山、浅間山、赤城山、榛名山など、関東周辺の火山が繰り返し噴火し、その噴出物が風によって運ばれ、長い時間をかけて地表に堆積しました。
南関東では主として富士山や箱根山など、北関東では浅間山、赤城山、榛名山などの影響が大きいとされています。
ただし、現在見られる関東ロームは、単に火山灰が積もっただけのものではありません。
火山灰や軽石などの火山噴出物が堆積し、長期間の風化、土壌化、再移動などを経て形成された地層です。
その過程で火山ガラスが変質し、粘土鉱物などが生成され、独特の土の構造が生まれました。
なぜ赤いのか
関東ローム層が赤褐色に見えるのは、火山灰に含まれる鉄分が風化・酸化することなどによります。
住宅の造成工事や道路工事で見かける赤土は、関東ローム層であることがあります。
ただし、赤い土がすべて関東ローム層というわけではありません。
火山灰なのに、なぜ粘土のような性質を持つのか
火山灰は、噴火直後の粒子の性質がそのまま残るとは限りません。
長期間の風化によって細かな粒子や粘土鉱物が形成され、水分を多く含む土になります。
関東ローム層には、一般的な砂や砂利とは異なる、火山灰質粘性土としての特徴があります。
その一方で、土の粒子同士の結びつきや、長期間形成された構造が、自然状態での強度を支えています。
ここが関東ローム層を理解するうえで重要な点です。
3.関東ローム層はどこにあるのか
関東ローム層は、武蔵野台地だけに存在するものではありません。
東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県をはじめ、関東地方の広い台地や丘陵地に分布しています。
ただし、同じ市区町村でも、台地の上、河川沿いの低地、谷底、埋立地では地層が異なります。
東京都|武蔵野台地を中心とする広い分布
東京では、武蔵野台地とその周辺の台地・丘陵地に関東ローム層が広く分布しています。
具体的には、練馬区、杉並区、中野区、世田谷区、目黒区、渋谷区、新宿区、豊島区、板橋区などの台地部分です。
さらに、武蔵野市、三鷹市、小金井市、国分寺市、小平市、国立市、立川市などにも広がっています。
ただし、これらの区市の全域が同じ地盤というわけではありません。
例えば世田谷区には、台地面だけでなく、国分寺崖線、多摩川沿いの低地、谷沢川などの谷地形があります。
渋谷区にも、台地と渋谷川沿いの谷底低地が存在します。
関東ローム層が広く分布する地域でも、河川が削った谷や人工的な盛土では地盤条件が変わります。
武蔵野台地の地形、地層、谷、埋没谷については、 武蔵野台地と東京の地盤を詳しく解説した記事 でも取り上げています。
神奈川県|横浜・川崎の丘陵地と相模原台地
神奈川県でも、横浜市や川崎市の丘陵地、相模原台地などに関東ローム層が分布しています。
横浜市では、青葉区、都筑区、港北区、緑区などの丘陵地を含む広い範囲に、火山灰質の地層が見られます。
川崎市では、宮前区、多摩区、麻生区、高津区などの丘陵・台地部分が関係します。
相模原市や座間市周辺の台地にも関東ローム層が分布します。
一方、鶴見川、多摩川、相模川などの河川沿いには沖積低地が存在し、台地の地盤とは異なる条件になります。
横浜・川崎の丘陵地に見られる地形の違いは、 多摩丘陵の地形と谷についての記事 とも関係しています。
埼玉県・千葉県・北関東
埼玉県では大宮台地や所沢周辺など、千葉県では下総台地などに関東ローム層が広く分布しています。
さらに、群馬県、栃木県、茨城県にも、それぞれの火山活動の影響を受けたローム層があります。
関東ローム層は、東京の一部の地盤を指す言葉ではなく、関東地方の地形と火山活動の歴史を示す重要な地層群なのです。
| 地域 | 主な分布地形・地域の例 | 確認したい点 |
|---|---|---|
| 東京23区西部 | 武蔵野台地、荏原台、淀橋台など | 台地面か、谷底・崖線・造成地か |
| 多摩地域 | 武蔵野台地、立川段丘、多摩丘陵など | 段丘面、斜面、谷、盛土 |
| 横浜・川崎 | 下末吉台地、多摩丘陵など | 谷戸、切土・盛土、擁壁 |
| 相模原周辺 | 相模原台地・相模野台地など | 段丘面と河川低地の違い |
| 埼玉・千葉 | 大宮台地、下総台地など | 台地上と谷底低地の違い |
※上表は代表的な分布地域の概略です。特定の住所における地層の存在や厚さを保証するものではありません。
4.関東ローム層は一種類ではない
関東ローム層は、長い期間にわたる火山活動によって形成されました。
南関東では、地形や形成時期などから、大きく次のように区分されます。
| 地層 | 形成時期の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 立川ローム層 | 約4万〜1万5,000年前 | 比較的新しい段丘面などを覆う |
| 武蔵野ローム層 | 約8万〜4万年前 | 武蔵野面などに関係する |
| 下末吉ローム層 | 約13万〜8万年前 | 下末吉面などに関係する |
| 多摩ローム層 | 約40万〜13万年前 | 古い段丘面・丘陵地に関係する |
※年代は代表的な概略値です。研究や地域によって区分・年代には違いがあります。
重要なのは、古いローム層ほど必ず強い、新しいローム層ほど必ず弱いという関係ではないことです。
地層ごとに風化の進み方、粘土鉱物の種類、含水比、強度特性が異なります。
また、同じ名前のローム層でも、場所によって厚さや土質が変化します。
多摩丘陵などでは関東ローム層が厚く分布する場所もあり、地表の赤土だけを見て地下の構造を判断することはできません。
5.なぜN値が低いのに住宅を支えられるのか
ここからが、関東ローム層の地盤を評価するうえで最も重要な部分です。
N値とは何か
N値は、標準貫入試験によって得られる地盤調査の指標です。
一定の条件で試験器具を地中へ打ち込み、所定の深さだけ貫入させるために必要な打撃回数を示します。
一般的には、N値が大きいほど貫入しにくい地盤と評価されます。
ただし、N値は地盤の強度や建物を支える力そのものを直接表した数字ではありません。
関東ローム層のN値は3〜8程度のことが多い
関東地質調査業協会によれば、関東ローム層のN値は3〜8程度の範囲を示すものが多いとされています。
数字だけを見ると、決して硬い地盤には見えません。
しかし、同程度のN値を示す一般的な粘性土より強度が高く、圧縮変形が小さい場合があります。
このため、条件が適切であれば、住宅などの低層建物を支える地盤として利用されることがあります。
一方、大型構造物については、関東ローム層の自然状態の支持力だけで十分とは限らず、より深い支持層や適切な基礎形式を検討する必要があります。
強さを支えているのは、自然に形成された土の構造
関東ローム層には、長い時間をかけて形成された粒子同士の結びつきがあります。
火山ガラスの風化・粘土化による結びつき、乾燥に伴う作用などが、自然状態の強度に関係すると考えられています。
つまり、粒子一つ一つが硬いから強いのではなく、土全体として形成された構造が強度を支えているのです。
これが、N値だけでは評価しきれない理由です。
関東ローム層の強さは、
土の粒子だけではなく、
長い時間をかけて形成された構造に支えられている。
地耐力とN値は同じではない
地耐力という言葉は、住宅の地盤を説明する際によく使われます。
しかし、建物の基礎を設計する際には、地盤の支持力だけでなく、沈下量、不同沈下、基礎の形状、荷重なども検討します。
関東ローム層では、N値から許容支持力度を推定する経験式が用いられる場合もありますが、その信頼性には限界があります。
N値が同じでも、自然状態のロームと、再堆積したロームでは強度が大きく異なることがあるからです。
N値が低いから必ず弱いとは言えない。しかし、N値が低くても大丈夫だと決めつけることもできません。
6.関東ローム層の弱点|なぜ状態が変わると危険なのか
ここまでの説明だけでは、関東ローム層は意外に強い土だという印象になるかもしれません。
しかし、注意すべき性質があります。
それは、自然状態で保たれていた土の構造が乱れると、強度が大きく低下する場合があるということです。
① 練り返しによる強度低下
関東ローム層は、掘削や撹乱によって自然の土の構造が壊されると、強度が低下することがあります。
土質工学では、自然状態の土と、練り返して構造を乱した土の強度差が重要になります。
関東ロームには、この差が大きいものがあります。
そのため、掘削した関東ロームをそのまま埋め戻したからといって、元の自然地盤と同じ強度になるとは限りません。
② 水分を多く含む|含水比80〜180%という特徴
関東ローム層は、一般に含水比が高い土として知られています。
防災科学技術研究所の「地盤の概説」では、関東ロームの含水比について、80〜180%という数値が示されています。
含水比とは、乾燥した土の質量に対する水の質量の割合です。したがって、含水比100%は、土の全体積の半分が水であるという意味ではありません。
ただし、含水比が高いことだけで、直ちに支持力が低いとは判断できません。
自然状態の構造が保たれているか、地下水の影響をどの程度受けているか、土が再堆積したものかによって評価が変わります。
地下水で飽和したロームでは、著しく強度が低下している場合もあるため、調査が必要です。
重要なのは、もともと水分を多く含む自然状態のロームと、水の影響や土の撹乱によって強度が低下したロームを区別することです。
③ 再堆積したロームは別物として考える
斜面から崩れ落ちたり、水の作用で移動したりしたロームが、谷底などに再び堆積することがあります。
こうした再堆積ロームは、自然の台地面に長期間残っているロームと同じ構造を持つとは限りません。
同じ関東ロームという名前でも、地盤としての強度が大きく違う可能性があります。
④ 盛土に利用した場合も条件が変わる
造成工事では、関東ロームを掘削して移動させ、盛土として利用する場合があります。
その場合、締固め方法、含水状態、排水条件などによって盛土の性質が変わります。
適切に設計・施工された盛土と、締固めや排水が不十分な盛土を同じように評価することはできません。
自然地盤の関東ローム層と、掘削・移動・埋戻しされた関東ロームは、同じ土でも地盤としての評価が異なる場合があります。
7.関東ローム層は地震に弱いのか
関東ローム層の地震時の危険性は、単純に「強い」「弱い」の二択では説明できません。
建物を支える強度と、地震の揺れの伝わり方、斜面の安定性、造成地の変形は、それぞれ異なる問題だからです。
① 地震の揺れが増幅する可能性
地震の揺れは、震源からの距離や地震の規模だけでなく、地表近くの地層の硬さ、厚さ、重なり方によって変化します。
一般に、軟らかい地層では地震動が増幅される場合があります。
関東ローム層も硬い岩盤ではないため、その地震動特性を無視することはできません。
ただし、関東ローム層があるという理由だけで、その場所の地震の揺れが必ず大きくなるわけではありません。
表層のロームの厚さや性質、その下の礫層や堆積層、地形、地震波の周期などを含めた評価が必要です。
② 崖や斜面では崩壊に注意する
関東ローム層が分布する場所で、地震時に特に注意したいのが斜面です。
台地の上に広がる平坦な自然地盤と、台地の縁にある急斜面では条件が異なります。
斜面には重力によって土が下方へ移動しようとする力が働いています。
地震の揺れが加わると、その安定性が損なわれる場合があります。
地層の境界、地下水、風化、斜面の勾配、擁壁なども影響します。
関東ローム層が自然状態で一定の支持力を持つことと、急斜面が地震時に安全であることは同じではありません。
③ 1971年・生田緑地のローム斜面崩壊実験事故
1971年11月11日、川崎市多摩区の生田緑地で、国の研究機関などによるローム斜面の崩壊実験が行われました。
斜面に人工的に散水して崩壊させる実験でしたが、崩壊は想定を超える規模と速さで起き、見学していた研究者や報道関係者など15人が犠牲になりました。
これは地震による事故ではありません。
しかし、関東ロームを含む斜面が、水の作用によって急激に不安定になり得ることを示した重大な事例です。
ただし、この事故から、関東ローム層のすべての斜面が同じ条件で崩壊すると結論づけることはできません。
斜面の形状、地層の境界、地下水、散水条件などが関係するため、個別の条件を確認する必要があります。
地震時の斜面崩壊を考える際にも、平坦地の支持力だけではなく、斜面の安定性を別に検討することが重要です。
④ 盛土造成地の地震被害
丘陵地の住宅地では、谷を埋めて平坦な土地をつくることがあります。
こうした盛土造成地では、地震による地盤の変形や滑動が問題になる場合があります。
関東ローム層が分布する丘陵地でも、自然の地盤と造成された地盤を分けて考える必要があります。
特に、切土と盛土の境界に建物が位置する場合、地盤の変形の違いが建物へ影響する可能性があります。
⑤ 液状化は起こるのか
液状化は、一般に地下水で飽和した緩い砂質地盤などで問題になる現象です。
自然状態の関東ローム層を、東京湾岸の埋立砂質地盤と同じように液状化しやすい地盤と説明するのは適切ではありません。
ただし、関東ローム層が分布する台地の中にも、谷底低地や人工的な埋戻し地盤があります。
その場所に砂質土などが存在すれば、ローム層とは別に液状化の可能性を検討する必要があります。
東京湾岸の地盤や液状化の問題は、 東京湾岸の地盤を詳しく解説した記事 でも取り上げています。
| 地震時の現象 | 関東ローム層との関係 |
|---|---|
| 地震動の増幅 | 地層の厚さ・硬さ・地下構造によって影響を受ける |
| 斜面崩壊 | 急斜面、地下水、地層境界、掘削などの条件に注意 |
| 盛土の変形 | 造成方法、締固め、排水、盛土形状などが重要 |
| 液状化 | 自然状態のロームは典型的な対象ではないが、別の土層には注意 |
| 建物の不同沈下 | 支持地盤の不均一性、盛土、基礎設計などが関係 |
東京・神奈川の地域別の揺れ、火災、液状化、インフラ停止については、首都直下地震の記事で詳しく解説しています。
関連記事|首都直下地震の地域別被害
8.武蔵野台地はなぜ地盤が良いと言われるのか
ここで一つの疑問が生まれます。
関東ローム層にこれだけの注意点があるなら、なぜ武蔵野台地は比較的地盤が良いとされるのでしょうか。
理由は、武蔵野台地が関東ローム層だけで構成されているわけではないからです。
武蔵野台地は、河川が形成した段丘面を基礎とする地形です。
場所によって、表面付近に関東ローム層、その下に武蔵野礫層や立川礫層などの段丘堆積物が分布します。
さらに下には、より古い地層が続いています。
つまり、武蔵野台地の地盤を評価する際には、関東ローム層だけでなく、段丘礫層や地下の堆積構造も考える必要があります。
関東ローム層は「土の種類」の話。
武蔵野台地は「地形と地層の成り立ち」の話。
この二つを混同すると、地盤の評価を誤ります。
また、武蔵野台地の中には、河川が削った谷や、埋没谷、人工的な造成地も存在します。
台地という大きな地形の分類だけでは、個別の土地の安全性は決まりません。
関連記事|武蔵野台地と東京の地形
9.国分寺崖線・多摩丘陵・横浜の谷戸はどう考えるか
関東ローム層の弱点が現れやすい場所を考えるうえで、東京・神奈川の崖線や丘陵地は重要です。
国分寺崖線|台地の上と斜面は違う
国分寺崖線は、武蔵野台地と多摩川側の低い地形との境界に続く崖線です。
国分寺、府中、調布、世田谷などに関係する地形で、周辺には湧水や斜面が見られます。
台地面に建つ住宅と、崖線の斜面に接する住宅では、確認すべき地盤条件が異なります。
関東ローム層の支持力が十分であっても、斜面や擁壁の安定性は別に検討しなければなりません。
多摩丘陵|切土と盛土を見分ける
多摩丘陵には、関東ローム層を含む地層が広く分布しています。
しかし、丘陵地の住宅地では、道路や宅地を平坦にするために造成が行われている場合があります。
切土によって自然地盤を削った場所と、谷を埋めた盛土では、地盤の成り立ちが異なります。
その違いは、地震時の地盤変形や擁壁の安全性にも関係します。
丘陵地の地形や住宅地との関係については、 多摩丘陵の記事 でも解説しています。
横浜の谷戸|同じ町内でも地盤が変わる
横浜市には、谷戸と呼ばれる谷地形が多く存在します。
丘の上、斜面、谷底、造成された平坦地では、地盤条件が異なります。
関東ローム層がある丘陵地だから安心という判断も、丘陵地だから危険という判断も適切ではありません。
重要なのは、建物がどの位置にあり、その土地がどのように形成・造成されたかです。
関連記事|多摩丘陵
10.関東ローム層と沖積低地、埋立地は何が違うのか
東京の地盤を考えるとき、関東ローム層のある台地と、東京東部や湾岸の低地を比較することがあります。
しかし、比較すべきなのは土の名称だけではありません。
地形の形成時期、地下水、地層の厚さ、砂質土や粘性土の分布、建物の基礎などが重要です。
| 地形・地盤 | 特徴 | 主な確認事項 |
|---|---|---|
| 関東ローム層のある台地 | 火山灰質土と段丘堆積物などから構成 | 支持力、谷底、斜面、造成履歴 |
| 沖積低地 | 比較的新しい河川・海の堆積物が分布 | 軟弱層、揺れの増幅、沈下、液状化 |
| 埋立地 | 人工的に形成された地盤 | 埋立材料、地盤改良、液状化、地中設備 |
| 丘陵地の造成宅地 | 自然地盤と切土・盛土が混在 | 盛土、擁壁、斜面、排水 |
台地は低地より地盤条件が良い場合がありますが、すべての台地が安全という意味ではありません。
反対に、埋立地であっても、適切な地盤改良や基礎設計が行われている建物があります。
土地の地形と、建物の耐震性能は分けて評価する必要があります。
関連記事|東京湾岸の地盤
11.住宅を買うなら、何を確認すればよいのか
ここまで関東ローム層の成り立ち、分布、強度、地震時の弱点を説明してきました。
しかし、住宅を購入する人にとって最も重要なのは、目の前の土地や建物がどうなのかということです。
① まず地形を確認する
その土地が台地面にあるのか、斜面にあるのか、谷底にあるのかを確認します。
住所や駅名だけではわかりません。
地形分類図、土地条件図、古い地図、現地の高低差などが参考になります。
② 地盤調査結果を確認する
住宅では、スクリューウエイト貫入試験などによる地盤調査が行われることがあります。
中高層建築物では、ボーリング調査や標準貫入試験などが利用されます。
調査方法は建物の規模や地盤条件によって異なります。
関東ローム層の場合、N値や換算N値だけでなく、土の状態、地層の連続性、支持力、沈下の可能性を総合的に評価する必要があります。
③ 自然地盤か、盛土かを確認する
関東ローム層が分布する地域でも、造成によって土地の状態が変わっていることがあります。
特に丘陵地では、切土・盛土の履歴や擁壁の状況が重要です。
可能であれば造成図面、地盤調査資料、過去の地形図などを確認します。
④ 建物の基礎を確認する
同じ土地でも、建物の規模、重量、構造によって必要な基礎が異なります。
戸建て住宅とタワーマンションでは、基礎設計の考え方も異なります。
地盤の表面に関東ローム層があるからといって、その地層だけで建物を支えているとは限りません。
杭基礎の場合は、より深い支持層まで杭を到達させていることがあります。
⑤ 擁壁と排水を確認する
斜面や高低差のある土地では、擁壁の状態、排水設備、周辺の地形が重要です。
擁壁の安全性は、関東ローム層の支持力とは別に評価する必要があります。
地震時の危険性を考える場合、建物本体だけでなく、敷地全体を見ることが大切です。
関東ローム層という名前だけで、土地の購入を判断しない。
地形、地層、造成、基礎、擁壁、排水。これらを合わせて確認することが重要です。
12.戸建てとマンションでは、地盤の見方が違う
戸建て住宅の場合
戸建てでは、比較的浅い地盤の支持力や沈下が重要になることがあります。
自然状態の関東ローム層が住宅を支える地盤として利用できる場合もありますが、調査結果によっては地盤改良や基礎の検討が必要です。
特に盛土、谷底、擁壁の近くでは、土地全体の条件を確認する必要があります。
マンションの場合
マンションでは、建物の規模や重量に応じて、直接基礎や杭基礎などが設計されます。
高層建築物の場合、表面の関東ローム層より深い地層が支持に関係していることもあります。
そのため、周辺の地形だけでなく、地盤調査報告書、基礎形式、構造設計、地震対策、管理状況などが重要です。
また、建物本体が地震に耐えても、周辺の道路、擁壁、上下水道などに被害が出る可能性があります。
地盤の評価と、地震後に生活を続けられるかどうかの評価は、分けて考える必要があります。
関連記事|戸建てを買う前に見ること
13.よくある疑問
Q.関東ローム層は軟弱地盤ですか?
一律に軟弱地盤とは言えません。
N値が比較的小さい一方、自然状態では一定の強度を持ち、住宅などの低層建物の支持地盤として利用されることがあります。
ただし、再堆積、地下水、盛土などの条件によって強度が低下する場合があります。
Q.関東ローム層は地震で崩れますか?
関東ローム層があるだけで崩壊するわけではありません。
ただし、斜面や造成地では、地震による崩壊や変形の可能性を検討する必要があります。
Q.関東ローム層は液状化しますか?
自然状態の関東ローム層は、典型的な液状化地盤とは異なります。
ただし、同じ敷地に砂質土や埋戻し土が存在する場合には、それらの地層について液状化の検討が必要になることがあります。
Q.武蔵野台地なら安心ですか?
武蔵野台地には比較的良好な地盤条件の場所がありますが、谷底低地、崖線、盛土造成地なども存在します。
台地という地形だけで個別の土地の安全性を判断することはできません。
Q.N値が低い土地は避けるべきですか?
N値だけで判断することはできません。
土の種類、支持力、沈下、地下水、地層の連続性、建物の基礎などを総合的に確認する必要があります。
14.結論|関東ローム層は、強い土なのではなく、強さを持つ条件がある土
関東ローム層は、火山灰などが長い時間をかけて堆積・風化して形成された地層です。
東京都や神奈川県をはじめ、関東地方の台地や丘陵地に広く分布しています。
N値は比較的小さいことが多く、硬い岩盤や締まった砂礫層と同じ地盤ではありません。
しかし、自然状態では粒子同士の結びつきなどによって、一般的な粘性土より高い強度を持つ場合があります。
そのため、住宅などの低層建物の支持地盤として利用されることがあります。
一方で、自然の構造が乱された場合、再堆積した場合、地下水の影響を強く受ける場合、斜面や盛土造成地にある場合には、慎重な評価が必要です。
地震に対する安全性も、関東ローム層という土の名前だけでは決まりません。
地震動の増幅、斜面崩壊、盛土の変形、建物の基礎、周辺のインフラ。それぞれを分けて考える必要があります。
関東ローム層は、無条件に強い地盤ではない。
しかし、無条件に弱い地盤でもない。
強さを支える条件があり、その条件が変われば評価も変わる。
不動産を選ぶ際には、地盤の名前だけではなく、土地の成り立ちと、そこに建つ建物を見ていく必要があります。
そして、その土地がどのような条件にあるのかを知ったうえで、住まいを選ぶことが大切です。
東京を離れると、
地形はもっとはっきり見える。
熊本の阿蘇へ行ったとき、
大観峰から景色を見ていて
印象に残ったことがあります。
山の大きさだけではありません。
巨大なカルデラの中に、
田畑があり、道路があり、
集落があり、人が暮らしている。
当たり前のことですが、
私たちは住所の上に
家を建てているわけではありません。
台地。
低地。
丘陵。
谷。
カルデラ。
人は、地形の上に暮らしています。
東京では建物が密集しているため、
そのことが見えにくくなっているだけです。
阿蘇のような大きな地形を見ると、
土地を見るということの意味が、
とても分かりやすくなります。
参考資料
- 関東地質調査業協会|関東ローム層の工学的性質
- 防災科学技術研究所|地盤の概説・関東ローム
- 関東土質試験協同組合|関東ローム層の強度特性
- 関東土質試験協同組合|関東ローム層の区分と年代
- 東京都地質調査業協会|台地の分類と名称
- 産業技術総合研究所・地質調査総合センター|八王子地域の地質
- 国土交通省関東地方整備局|鶴見川水系河川整備計画(平成19年3月)
※本記事は関東ローム層の一般的な地質・地盤工学上の性質を解説したものです。個別の土地の支持力、地震時の安全性、基礎の適否を判定するものではありません。地層の種類、厚さ、地下水、造成状況、建物条件などによって評価は異なります。
関連記事
不動産は、物件から始めない。
先に、お話を。
